中間管理職は変わったか?
織田 聡氏
運営者 織田さんは経営コンサルタントとして、たくさんの会社を見ていらっしゃったので伺いたいのですが、3.4年前に比べると、日本企業の組織文化も、環境に押されてだんだん変化してきていると思うんです。昔に比べたらずいぶんましになっているのではないでしょうか?
中間管理職も、「今までと同じような仕事を、同じようにやっていればいいんだ」という意識からは、かなり抜け出てきているのではないかと思うのですが、どんなもんでしょうか。変わった部分と、変わっていない部分があると思いますが?
織田 中間管理職はなかなか変わらないですよ。
運営者 やっぱり変われませんか(笑)。
織田 難しいですね。部長以下の中間管理職はほとんど変わっていない。
15年前に私が大手鉄鋼会社に勤めていたころからほとんど変わっていないと思います。生存の危機感を与えなければ、人間は変わらないですね。そういう意味では、役員の方がまだ危機感がありますよ。
運営者 なぜ役員はちゃんと危機感を持っているのでしょうか?
織田 数字に責任を持っているからだと思います。社長からのプレッシャーもあるし。
変革している企業は、トップのメッセージ発信力がしっかりしてると思いますね。タスクを成し遂げるために、役員の下のレベルで何をするべきかという具体的な課題を設定しているわけです。
単にお題目としてROEとか数値目標を言っているだけのトップだとダメです。
運営者 また景気が持ち直してきていますから、ますます変われないですね。
織田 景気がいいと言っても、結局輸出に頼っているだけです。
運営者 結局日本の会社には人治主義の伝統があるから、トップが優れていればある程度変化することはできるわけですが。
織田 トップの資質に依存している業績回復というのは、決して持続的ではないでしょうね。
運営者 カイゼンが一般社員の意識にまで及んでいればいいのですが、なかなかそうはならないでしょうね。
織田 やっぱり、給料がある程度保証されてしまうと、「仕事をよくしよう」と考えてがんばる人はなかなか少ないですから。
ES(従業員満足)の考え方で「満足できる職場環境を提供できないとだめだ」などと言う人もいますが、僕の目から見ると、例えば50代のあまりバリバリ仕事をしてこなかったような人は、わくわくするような職場環境よりも、安定して給料をもらえる職場環境の方がESが高いんですよ。
運営者 「仕事は、自己実現とはまったく関係がない」と割り切れる人たちなんですかね?
織田 という人もいますね。給料運搬人であることが家族の中でのレゾン・デートルなわけです。
運営者 定年退職したらぬれ落ち葉になっちゃいますね。
織田 そういう環境にどっぷりつかって生きてきた中間管理職が変わるためには、スキルが必要なんですよ。