リーダーシップの根源にはスキルがある
織田 聡氏
織田 そういう環境にどっぷりつかって生きてきた中間管理職が変わるためには、スキルが必要なんですよ。
スキルというのは、べつに心構えではなくて、具体的な問題分析とか、課題設定ですとか、そういう基本的なビジネススキルを持っていなければ、変わることはできないんですよ。
運営者 例えば中間管理職には、どのような能力がないんですか?
織田 企業の企画部のようなところにいる人でも他の部署にいる管理職でも、全体のフレームワークを見る力もなければ、どのようにして戦略を立てていくかという視点もない人がいますよ。
運営者 それじゃあ、企画部じゃないじゃないですか。
織田 戦略を立てるときに必要なデータの収集力とか、図示化能力とか、そういう極めてプリミティブな力が必要なわけですが、それを必要としなくても出世の階段を上ってくることができた会社では、中間管理職が変わろうとはしません。
なぜかと言うと、現状の何が問題なのかということがわからなければ、変わろうとする動機が起らないからです。
運営者 現状の問題点を感じずに、生きていくことができるものなのでしょうか。
織田 「このままではまずいなあ」と感じてはいても、その先の一歩を踏み出す力がないんです。
その一歩を踏み出すためには、中間管理職はあまりやりたがらないような、新入社員が受けるようなスキルトレーニングを受けるか、あるいは自分で勉強しなければならないんです。
運営者 ということは逆に言うと、管理職になるために本来は身につけていなければならなかったスキルを、今まで身につける機会がなかったということですか?
織田 そうですね。スキルを身につけないままに、なあなあで職位が上がってきてしまったわけです。
運営者 それはまさに年功序列のなせる技なんでしょうね。
織田 まさに年功序列の恐るべき弊害ですよ。それとわれわれは日夜格闘しているわけです。
運営者 しかし日本のビジネスマンは、日本企業開闢以来そのような局面に突き当たったことはないんですよ(笑)。
そんなことを考えもせずに、なんとなく共同体の中で出世していって、部課長になって退職していったわけです。まったくもって、初めてのフェイズだと思いますよ。
織田 組織のリーダーになる人というのは、状況の分析とか、状況をもたらした原因の分解とか、あるいは優先順位付けができなければなりません。それは軍隊だろうが、役所だろうが、教会だろうが変わらないと思うんですよ。
ところがそういったリーダーシップの根源であるものの見方とかスキルを身につけなくても偉くなることができたという、きわめて甘い世界であったと思いますね。