国会議員は、「自分たちの仕事が何なのか」わかっていなかった
桜内 一方の当事者である財務官僚なんですが、財務官僚はもともと会計を知らなんですけど、本能的に嫌がりますよ。
なぜかと言うと、財務省の最大の権力源泉は予算編成権にありますから、国会議員がすべての予算の科目について修整できて、まったく別の予算を作ってしまえる仕組みは、彼らは嫌ですからね。
運営者 でも、憲法には「国会が予算を決めなさい」と書いてあるんでしょう。
桜内 そうなんですけどね、いまだに「財政処理権限は行政にある」と考えて日々の仕事をしている人たちがいるわけです。
移動中も勉強。運営者 でも役人は何に基づいて仕事やってるかというと、法律に基づいてやってるわけですよね。
桜内 法律と、予算の執行権を持ってやっているわけです。
なぜこれまでこれが変えられなかったのかというと、僕はやっぱり国会議員が自分たちの仕事が何なのかわかっていなかったからだと思います。国会議員は、唯一の立法機関なんだから、立法権をちゃんと行使しなければなりません。
運営者 倫理や道徳を含んだ曖昧な法律を作って喜んでちゃダメなんです。
桜内 予算にしても、「国会の権限」だと憲法に書いてあるのですから、財務省が持ってくるものを「ハイハイわかりました、ちょっとここはだめですね直してください」というレベルではなくて、「自分たちが予算を作り替えることができるんだ」という自覚を持つことがまず必要なはずなんです。
運営者 それもまた、桜内さんは実際にやってみて、みんなに見せたわけですが、これを実現するためには国家財政や地方財政を扱うための公会計の基準作りとソフトウェアづくりが必要だったわけです。この10年間に桜内さんがやってきたことを教えてください。
桜内 ええ、さっきご説明したように、数字で変化を見せるものを作るまでの紆余曲折ですが・・・まず「公会計の概念フレームワーク」というのを作りました。これを作るために、国にとって収益とは何か、資産とは何かといった概念の他、そもそも公会計の目的とは何なのか、そしてその目的を達成するための財務諸表体系とはどのようなものなのか、といったロジックを整理したわけです。これがなければ会計基準を作ることができません。
運営者 まさに、何もないところから作り始めたということですね。
桜内 例えばすごく乱暴な反対概念もあるんです。セクターニュートラルと言って、「企業会計でも、学校でも、病院でも、行政でも、会計の概念はいっしょでいいじゃないか」という考え方もあるんです。それを公会計の会議で主張して、「企業会計と同じでいいじゃないか」という人もいるんです。だったら公会計という分野はいらないじゃないかという話ですよ。
運営者 うむ、では公会計が必要な理由とは?