会計士20人が、束になって「仕訳」を作成
桜内 例えば公的年金債務のような、目に見えない債務があるわけです。これについては、まず債務がいくらあることを認識しなければ、どう処理すればいいかも分からないじゃないですか。
「65歳以上になったら年金を払いますよ」と国は法律でお約束する一方、国民のみなさんはすでに年金保険料として払い込んでいるわけです。
だから本来であれば、国はいくら積み立て不足があるのかを債務として計上しなければならないはずなんです。でも厚生労働省は計算していません。
そこで私のほうで作った会計システムで、厚労省が5年に一度発表している数字を元に計算してみたら、この目に見えない年金債務が現在価値で721兆円もあることがわかったんです。
ベネチア・サンマルコ広場運営者 契約者からしたら、詐欺的状態じゃないですか。
桜内 これは、目に見えない「暗黙の債務」です。目に見える国債や政府短期証券の残高ですら既に1000兆円を超えてますから、全部合わせると1700兆円以上になります。これをどう処理していくんですかということです。
年金債務を目に見える形にするには、公的年金制度を現行の賦課方式から積立方式に移行するのがベストです。移行しても債務は残るので、現在価値で毎年7兆円ずつ100年かけて償却するとか。
運営者 大インフレにして帳消しにするとか(笑)
桜内 とにかく、人間というのは目に見えないものを扱えないので、「まず本当のウソ偽りない数字を把握して、考え始めましょう」ということです。
運営者 で、話を元に戻すと、そういうロジックを積み上げて、まず最初に公会計概念フレームワークをつくったわけですね。
桜内 ええ、そしてそれに基づいて、複式処理ができるようにするための仕訳パターンを作ったんです。
運営者 どのくらい作ったんですか?
桜内 新潟大学の助教授時代から始めて参議院議員になってからも延々とやっていたのですが、バランスシートをはじめとする財務諸表には、勘定科目が300個くらいあります。その組み合わせです。
国の予算を上から下まで4、5年分見て仕訳パターンを作っていくのですが、一般会計特別会計、歳入歳出合わせると、予算科目の数は1年分で1万3000個くらいあるんです。
それをパターン化していくんです。「仕訳合宿」と称しまして、議員会館で、会計士やSE、プログラマーのみなさんと朝から晩まで予算書を、上から下まで見ていくわけです。
20人くらいのみなさんですかね。本当に手弁当で、「これは国のためになるのだ」という思いでご協力いただきました。
運営者 はあー、すばらしいことです。
桜内 これをいちどやっておけば、毎年新しい予算科目はそんなに出てこないですよ。