独り善がりを排した「開かれた政策論議」を
運営者 まず最初に、瀬口さんは何のお仕事をされているのかということをお話しいただきたいのですが。
瀬口 私は日本銀行の政策委員会室で、日銀と財界の橋渡しをやっています。
普通、役所のような公的な機関で橋渡し役というと、「ご説明」と称して、自分たちの意見の相手に押しつけるイメージですね。そして、自分たちの意見を財界などで代弁していただくと。自分たちが考えている政策を理解してもらって、そのシナリオ通りに発言してもらうとか。
でも私は、そういうのに反対なんです。そもそも政策というのは、政策立案者が独り善がりになってしまうとバランスがとれないものだと思うんです。
運営者 なるほど。
瀬口 金融政策にしても、他のどんな政策にしても、独り善がりを排し、他の優れた英知を集めて、自分1人だけの力ではとてもできないような政策をどう実現するかを考える、それが政策を企画運営する人間の責任ではないかと思います。
ですから、日銀がやろうとしていることにはどういう背景があって、日銀としてはそれをどのように理解していて、その裏付けになるデータにはどのようなものがあって、どのようなことを実現するために何をやっているのかということを相手に伝えるというのがまず基本です。
相手に自分がやろうとしている政策の中身や、政策の影響として日銀がどのように考えているのかということをきちんと理解してもらうわけです。その上で、現状に対する日銀の認識がまちがっていると思われるのなら、「まちがっている」とはっきり言って欲しいのです。それから現状認識は正しくても、政策の企画や判断がまちがっている。それから政策が正しくても、その政策が及ぼす影響の評価がまちがっている。そういうことがあるのなら、何でも言ってほしい。「一緒に政策を考えてほしい」と思ってるんです。というのが、僕が考えている経済界と日銀の橋渡しの仕事です。
運営者 パブリック・オピニオンの考え方ですね。
瀬口 日銀がやってることはきちんと説明します。だから、皆さんからも日銀に対して意見を言ってほしい。双方向のコミュニケーションをやるわけです。
そして日銀と違う意見があるのなら、堂々と外でどんどん言ってほしいわけです。
運営者 外で言った意見は、日銀の人も見ることができるからですね。
瀬口 そうです、そして日銀自身もどんどん意見を外部で発表します。そうすれば両方の意見を聞いた人が判断をできますし、その人がまた日銀に対しても意見も言うことができますよね。その繰り返しの中で、だんだん現実に合ったいい政策ができてくるはずだというのが僕の考え方です。