中国人は遅刻しそうになっても連絡しない
エコノミスト
田代秀敏氏
田代 そういう意味で、中国の書法は、すごく切羽詰まったものがあります。しかし、その文字は、決して言を尽くさないし、言は意を尽くさないんです。不思議な言葉の体系ですよね。
運営者 意外です。僕はあの書が雄弁に真理を語っているからこそ、彼らは何世紀も大切にしてきているのかと思っていました。意外とそんなに信用してないんですね。
田代 中国人にとって、漢字というのは交通標識みたいなものなんです。それを北京の人は北京語で読むし、上海の人は上海語で読む。でも、お互いそれを声を出して読むと、さっぱり意味がわからないんです。
運営者 あくまでも記号なんですね。
田代 でも交通常識だから、なんとなく意味は伝わります。もっとも、伝わるのは、本当に言いたかったことの何分の一かです。
運営者 その他、中国人を理解するために覚えておかなければならないことは何ですか。
田代 日本人が中国人を理解するのは難しいですよ、とにかく中国は日本と全く違う社会ですから。
例えば中国には非常に大きな企業がたくさんありますよね。だけど私から見るとあれは普通の企業には見えないんです。
運営者 どういうことですか。
田代 中国の会社では、個人レベルでさえもそうなんだけど、「ほうれんそう」がないんですよ。
運営者 「報告、連絡、相談」ですね。
田代 日本の企業に入るとまず最初に研修で厳しく教わるのは、「何事も報告、連絡して上司と相談せよ」ということです。そうしなければ集団として機能できないと日本では考えています。
中国の企業は正反対で、報告しない、連絡しない、相談しない。
運営者 社会性がないってことじゃないですか。
田代 いえ、中国人は社会性が非常に高いんです。日本人以上に高いでしょう。日本社会よりも中国社会の方が長く続いているわけですから。日本以上に、アメリカと、うまくやっている。でも、「報連相」は、しません。
約束の時刻に遅れてしまうと、日本人だったら、すぐに携帯電話で、「すみません、遅れてます」と連絡しますよね。
運営者 ええ。
田代 中国人は、まずしません。「定刻になっても自分が現れていないのだから、遅れていることは明らか。それをあえてもう一度言う必要があるのか」ということで、自分から連絡はしません。だから、中国人に「すみません、私いま遅れています」と電話したら、「当たり前のことをいちいち言うな」と、かえって不機嫌にさせてしまいます。
運営者 そこにいないんだから(笑)。