権力・地位・メンツが大切
エコノミスト
田代秀敏氏
田代 簡単には党の権威は上がらないですよ。だから宇宙ロケットを打ち上げなければならないんです。
運営者 彼らにとっては、党の権威を高めるということは国家存続のためにどうしても必要なことなんですね。
田代 いや、共産党にとって国家というのは、自分たちの目的を達成するためのヴィークル(手段)の一つにすぎないないんです。国家は軍と並ぶ党の子会社なんですから、あくまで共産党が中国の主体なんです。
だから中国の子供たちが学校で歌わされるのは、「共産党がなければ新しい中国はない」という歌なんです。
運営者 とっても楽しそうな歌ですね(笑)。
田代 これを幼稚園児たちが手をつないで、歩きながら歌っているんです。とてもかわいらしいですよ。
運営者 子供の時から歌わせれば、それなりの洗脳効果がありますよね。
田代 全然ないんですよ。
運営者 えっ、そうなんですか。
田代 洗脳できるのは、抽象的な概念、ふやふやしたあいまいなものが好きな人だけですよ。だから日本人はすぐに洗脳されるんです。
運営者 ということは、現実主義の塊のような中国人は洗脳できないということか。カネで釣るしかないのかな。
田代 ただ、中国の人たちは現実主義者なんだけれど、お金が欲しいというというわけではなくて、むしろ地位がほしいんです。
地位を守るためには、さっき言ったようにたとえ100人の宴会であっても全額自分が払うようなことをするんです。そのためのお金が欲しいわけです。メンツを守るためですね。
運営者 メンツというのは、地位と同じようなものなのでしょうか。
田代 いえ、ちょっと違いますね。
運営者 では、中国人にとってなぜ地位が重要なのでしょうか。
田代 中国人は、日本人とは違って、「無位無冠だけれどあの人は立派な人だ」と言って人を認めるようなことは絶対にしないからです。
具体的にその人がどれだけの権力を持っているかが問題なんです。中国では「権力、権限、権利」はすべて同じ言葉です。「権力」で表現される同義語なんです。
ですから旦那が家に帰ってきたら、奥さんが勝手に新しいソファーを買っていたとしても、「なぜこんなもの買ったんだ?」と言おうものなら、奥さんに「家の中のことは私の権力よ」と言われてしまい、ベッドの側に一晩中ひざまずかされたり、テラスに押し出されてしまうんです。
中国では、権力が大きければ大きいほど、立派な人だとみなされるんです。