政治がすべての価値の源泉
エコノミスト
田代秀敏氏
運営者 所有権の概念が、われわれと根本的に違う感じがしますね。ほんとにジャイアニズムで、強者であれば「ボクのものはボクのもの、君のものもボクのもの」というのが、偉くなれば、権力を握れば通用するという感じがあるわけですね。
田代 その代わり、権力者はチャリティー活動などには熱心に参加します。
運営者 中国で一般的なチャリティーというのはどういうものがあるんですか。
田代 たとえば、乞食に施しをしてやるとか。
共産党の偉い人たちは、いつもポケットに相当の札束を入れていて、乞食を見たら、路上の缶カンの中に結構まとまったお金をかならず入れていきます。
運営者 あの、共産中国には乞食なんか存在しないのが建て前なんじゃないですか。
田代 オリンピックのおかげで北京からほとんど追い出されてしまいましたが、乞食は存在しますよ。見ていると、ほとんどの人民は無関心ですが、共産党の幹部の人たちは、きちんと施しをしていますよ。
四川の大地震の時も、寄附金の金額が人民日報に掲載されたじゃないですか。だれがいくら寄付したか。
運営者 そういえば、国別の寄付金額も積み上げて報道されていたというニュースを見ましたが。
田代 ジャッキー・チェンなんかすごかったですよ。大枚をはたいて、ますます人気が上りましたね。
これは日本とは全く違う感じですね。
運営者 私にはわからない感じなんですが、寄付した金額が大きければ大きいほど、その人は偉いということになるんでしょうか。
田代 そうですね。中国ではそのように、すべからくお金が必要ということです。だからお金が欲しいんだけど、それはお金そのものが欲しいわけではなくて、お金を使うことによってメンツを保つことができるからです。
運営者 そういう動機があってお金を稼ぐことに励むのであれば、まあそれは悪いことではないのでしょう。
田代 日本と中国が徹底的に違う点は、中国では政治がすべての価値の源泉なんです。
運営者 政治というのは、何だと考えればいいでしょうか。
田代 権力を操ることですよ。