HOME > オペラ・クラシックコンサート便り > 新国立劇場《リゴレット》を観て(2008年10月31日)

印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |


ナビ1ナビ2ナビ3ナビ5
ナビ4ナビ6

新国立劇場《リゴレット》を観て(2008年10月31日)

武田雅人

 3年間のジャカルタ暮らしの間、何度かオペラを観に東京に帰ってきたことがありますが、新国立劇場の公演に行くのは本当に久しぶりのことです。この間東京にいたとしても、ノヴォラツキー時代の新国立の演目と歌手陣はイタリア・オペラ・ファンには物足りないものだったので、足が遠のいていたことに変わりはなかったかもしれません。新国立の中にはいくつかのホールがありますが、以前「オペラ劇場」と呼ばれていた一番大きいホールは、いつの間にか「オペラ・パレス」という名前になっていました。単なる看板の架け替えですが、もともと「劇場」という華やかなイメージがあまりないこの建物にどうしてこのような安っぽいネーミングをしたのか、理解に苦しみます。

 それはさておき、ヴェルディ中期の傑作《リゴレット》の公演はどうであったか、といいますと、3人の主役は期待どおりだったにもかかわらず、残念ながら全体としては物足りなさが残るものでした。もしかしたら、レオ・ヌッチが歌う至芸のリゴレットをヴェローナで3回、ボローニャ歌劇場来日公演で1回の都合4回も聴いてしまっている私たち夫婦があまりにもすれっからしになってしまっているだけなのかも知れないのですがノ。
 まず幕開きのオーケストラの前奏がいただけない。金管による「モンテローネの呪い」のテーマがちっとも不気味に響かない。そして、マントヴァ公爵による<この女も、あの女も、余にとっては、みな等しく>という色好み宣言バッラータは、テノールのシャルヴァ・ムケリアのすばらしい美声にもかかわらず、はずむような軽薄さがない。さらには、モンテローネ登場にも緊張感がない。これはどうしたことなのか?もちろん、責任は指揮者にあるのでしょう。でも、ダニエレ・カッレガーリは、もともとこんなにヘボな指揮者だったでしょうか?
 2001年に彼が新国立で「ドン・カルロ」を振った当時の私の感想文にも、「ヴェルディらしい熱気がやや不足気味で、こじんまりとまとまった演奏に思えた」と書いてあるので、もともとムーティやオーレンみたいに燃え上がるようなタイプではないのかもしれません。しかし、昨年(2007年)夏にマチェラータで聴いた《マクベス》では私の感想は以下のように変わっています:「指揮のダニエレ・カッレガーリの手腕はさすがである。熱気のこもった音楽を作っていた。前述のバレーシーンのほか、第1幕、第2幕のフィナーレのコンチェルタートなど、この作品のもつ面白さを十分に引き出していたと思う」。
 今回の公演でも、幕が進むにつれて、音楽が充実してきたところをみると、彼のオペラ指揮者としての技術・資質がひどいものではないことがわかります。私は今までに《リゴレット》の公演をおそらく10数回はナマで聴いていますが、今回の第1幕はその中でも最低の出来だったように思えてしまう。
 原因はオーケストラにもある、という気がしてなりません。東京フィルは、日本のオケの中でも最もオペラの経験は多い楽団のはずなのですが、この夜はなんだかあまり馴れていないような印象を受けました。気のせいかもしれませんが、ピットの中にはいやに若いメンバーが多いようにみえます。最近の東フィルはこういう構成なのか、あるいは何かの事情で当夜だけ「トラ」が多かったのか。この日はシーズン3回目の公演で、合わせる時間がなかったというわけではないはずなのですが、指揮者、ソリスト、オケの間で何かお互いにやりにくそうな感じがあるような気がしました。

 さて、そのソリストの話に移りましょう。題名役はグルジア出身のラード・アタネリ。同じ世代のアルベルト・ガザーレやアンブロージョ・マエストリと並んで私が最も期待している若手ヴェルディ・バリトンのひとりです。10年前にミラノのスカラ座で彼がマクベスを歌うのを聴いて、その硬質で直進性のある声の響きのよさにびっくりしたものです。2006年の「東京オペラの森」公演《オテッロ》でヤーゴを歌いました。最近やっと世界各地の一流歌劇場でも認められてきたようです。今回もその声は健在でしたが、上記のような事情で、オーケストラといったいになって完全燃焼しきれないもどかしさがあり、この役の屈折した複雑な性格を表現するには、やや淡白な歌唱と演技に思えました。
 ジルダ役はフランスのソプラノ、アニック・マシス。彼女は、昨年(2007年)夏のヴェローナで、《セヴィリアの理髪師》を歌うのを聴いて、正確なアジリタのテクニックを持ったソプラノ・リリコながら広い会場によく響く力強い声とチャーミングな容姿にすっかり魅了されたものです。今回室内の劇場で聴いてみると、ルチアやアミーナなどベル・カントの技巧的な役柄を持ち役にするわりには、暗めの音色をもったソプラノだと思いました。フランス人らしく意志の強そうなオトナの女という顔立なので、ジルダの役には少し違和感もありましたが、演技力と歌唱テクニックは一流だと思います。似たようなレパートリーの若手美人ソプラノには、アンナ・ネトレプコやステファニア・ボンファデッリなど、ライバルが多いのですが、今後も活躍が期待できるでしょう。

 主役3人のうち、上記のふたりはもともと期待していたのですが、テノールのシャルヴァ・ムケリアは初めて聴く人でノーマークでした。前述したように第1幕冒頭のアリアこそノリが悪かったもののその甘く響く美声はなかなかのもので、有望なテノーレ・リリコが出てきたな、という印象を強く受けました。プログラムによると、ウィーンの05/06シーズンでグルベローヴァを相手に《清教徒》を歌い絶賛されたとか。アタネリと同じグルジアの出身。
 スパラフチーレの長谷川顕、マッダレーナの森山京子など、日本人キャストも健闘はしていたものの、上記3人の「外タレ」と比べると残念ながら格が違う感じ。特にモンテローネ伯爵を歌った小林由樹の非力さが目立ってしまいました。いつも思うのですが、出番は少ないもののこのオペラのキーロールであるこの役が軽視されているプロダクションが多すぎます。主役のリゴレットが「あの呪い」とつぶやくシーンが繰り返し出てくるわけですから、モンテローネが恐ろしい声で呪ってくれないと、この芝居は成り立たないのです。声が多少割れてもいいから、フルオーケストラの咆哮に負けない血を吐くような叫びを出してほしいところなのに、スマートに歌いすぎていました。

 アルベルト・ファッシーニ演出、アレッサンドロ・チャンマルーギ美術・衣裳の舞台は、重厚でオーソドックスなもので、既に新国立では何度も上演されているプロダクション。ファッシーニが05年に物故しているため、田口道子による再演演出。2000年にパルンボの指揮でこのプロダクションを観ているものの、細部はもう記憶にありません。今回、人の動かし方に無駄で無意味なものが多いような気がしました。






愛媛4区 桜内ふみき 公認会計士サイト運営者は桜内ふみき氏をサポートしています



人間力★ラボ



「人間力」エピソード





ナビ1
ナビ2
ナビ3
ナビ4
ナビ5
ナビ6


芦川淳氏   自衛隊vs.人民解放軍 我らもし闘わば
芦川淳氏   原子力空母ジョージ・ワシントンに乗ってきた!
芦川淳氏  沖縄の基地問題など、国防を考える3
田代秀敏氏 「混沌の大国」中国と中国人を知る

神保哲生氏  今更なんですが、「ジャーナリズムとは一体何なのか」
三神万里子氏 メディアの「情報信頼性評価基準」を考える

山田恭路氏 自然派ワインに首ったけ
川村武彦氏+山田恭路氏 「天才の国」イタリア自然派ワインの真実


野中郁次郎氏 ナレッジ・ワーカー育成講座
本間正人氏  コーチングは日本の「やる気」を呼び起こすか
三ツ谷 誠氏  市場、個人およびカイシャの一般法則
織田聡 氏   カイシャ文化の現在を問う

「国ナビ」で作った予算対案を衆院本会議に提出/桜内文城 氏
竹中平蔵氏  なぜいつまでたっても「改革」できないのか
中林美恵子氏 アメリカ議会に見る「機能する立法府」のあり方
瀬口清之氏  パブリックマインドとは何か

小西達也氏 「チャプレン」という仕事 ヴェルディ&ワーグナー生誕200年 記念座談会
爆笑座談  オペラ愛好家とはいかなる人種か?
METを観たら、METを読もう!
2013年夏のヴェローナ音楽祭/武田雅人
2010年夏のヴェローナ音楽祭/武田雅人
2007年夏のヴェローナとマチェラータ音楽祭/武田雅人
偏愛的オペラ談義

ネット起業! あのバカにやらせてみよう
ベネチア貿易船復元計画
江戸城再建計画
『日本の借金』時計への勝手リンク
12-13イタリア旅行
11ヨーロッパ紀行
04ヨーロッパ紀行
02ヨーロッパ紀行
フィリピン有情
佃点描
ぼくはこんな記事をつくってきた
余は如何にして編集者となりし乎
雑誌づくり講座

4秒でわかる Pin Point ワールドカップ2014
4秒でわかる Pin Point ワールドカップ2010
日本のサービス、ここが間違ってる
爆笑! 四酔人サイト問答
女子大生版「日本のカイシャ、いかがなものか」 丸山真男と日本の外骨格
藤原正彦先生論文「国家の堕落」を読む
金融工学は製造物責任の夢を見るか?
酒飲みの「旅行話」
台灣好好 日本よりも日本らしく
さる名門女子大における恋愛論講義
人間力営業
「人間力」101本勝負メールマガジン
「人間力」とは、大人になることと見つけたり

最後に勝つのは「新日本人」だ
「新日本人/旧日本人」モデル
「新日本人」論 対話篇
「カイシャ主義」に挑戦! “オープンソース型ビジネスマン”の生きる道


誰が神を殺すのか
構造改革とは意識改革である
現代都鄙問答
一億総中流の倫理崩壊
完成! 「新日本人ルネサンス論」
日本人の田舎者意識の精神史的地位

鈴鹿市の見える歯科治療・歯科CT 仙川駅前の皮膚科・気管支ぜんそく 長引く咳  東京都 高輪矯正歯科・八重歯  税理士法人浅野会計 名古屋市の相続承継・会社設立 ひかり歯科 千葉のキッズ予防歯科 スタッフ 匝瑳市 デリバティブ 仕組債・仕組預金の商品分析に関する解説 他社株転換債 社員研修 マナー研修 身だしなみ愛西市近くの審美歯科

銀座の老視矯正 コンタクトレンズ制作眼科豊田市にある内科・点滴・相談漏斗胸・胸郭変成の外科治療専門サイト千葉市 心療内科・椿森・うつ医療ホームページ/クリニック/医院/診療所の集患増患コンサルなら

金沢区/内科 かぜ国立市/内科 糖尿病治療 中央線介護の管理者/アルバイト/パート|三重県鈴鹿市・安心シンプルな手術法、漏斗胸治療デザイナー求人戸塚クリニック 横浜市戸塚区 内科笹塚 メガネは眼科で相模原市南区の内科 動脈硬化

鶴見区/整形外科 リハビリ科浜松市/ALTA療法 痔の相談 薬物療法青森市役所横/横内耳鼻科医院開業セミナー
大阪市の肛門科専門医取得・静脈瘤治療・内視鏡検査アルタ療法講座 治療概念町田駅近くのたむら整体院サイト 顎痛松山の漏斗胸治療・救急科案内ル・サロン 柿本葛西駅/整体 頭蓋オステパシー 相談怪我やヤケドなら形成外科へ