HOME > オペラ・クラシックコンサート便り > 2009年スカラ来日公演9月6日《アイーダ》(NHKホール)

印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |


ナビ1ナビ2ナビ3ナビ5
ナビ4ナビ6

2009年スカラ来日公演9月6日《アイーダ》(NHKホール)

武田雅人

アイーダ:ヴィオレッタ・ウルマーナ
アムネリス:エカテリーナ・グバノヴァ
ラダメス:ヨハン・ボータ
エジプト王:マルコ・スポッティ
ランフィス:ジョルジョ・ジュゼッピーニ
アモナズロ:ホアン・ポンス
使者:アントネッロ・チェロン
巫女:サエ・キュン・リム
プリンパル(バレー):サブリナ・ブラッツォ
アンドレア・ヴォルピンテスタ

指揮:ダニエル・バレンポイム
演出・装置:フランコ・ゼッフィレッリ
衣裳:マウリツィオ・ミレノッティ
振付:ウラジーミル・ワシーリエフ

 バレンボイムの指揮は精緻で美しいものの、ほとばしるような熱気やギラギラとした緊張感など、スカラの「ヴェルディ」に私が期待したものが十分に感じられないもどかしさが感じられる公演ではあった。これまでのスカラ来日公演でアバド、クライバー、ムーティらが聴かせてくれたヴェルディにはあって、バレンボイムのそれにはないものが確かにあるように感じられる。歌手陣が小粒になったという影響もあるかもしれない。しかし、1か月前にヴェローナで聴いたダニエル・オーレン指揮の《アイーダ》もキャストのレベルは同等であったが、はるかにスリリングで興奮させてくれるものだった。
 そうはいっても、良いところもたくさんある。例えば、前奏曲や第3幕冒頭の弦の響きの美しさは天上的であったし、最終幕のアイーダとラダメスの2重唱からフィナーレに至る部分のアンサンブルは実に見事で感動的だった。総体としてバレンボイムは、ゼッフィレッリの演出とはやや矛盾するのだが、スペクタクル性よりも愛による魂の救済を強調する、コンヴィチュニー演出的な解釈を目指していたのかもしれない。

 歌手の中では、題名役のウルマーナが際立っていた。彼女は2000年9月のスカラ来日公演《レクイエム(ヴェルディ)》ではメッゾ・ソプラノを歌っていた。それも非常によい演奏だったが、今回はソプラノとしての高音の伸び、安定性も申し分なく、持ち前の中音域の力強さも保っていて、アイーダに求められる資質を完全に満たしているリリコ・スピントであると思う。第2幕凱旋の場の大アンサンブルを突き抜ける強靭な声の直進性もあるとともに、第3幕のナイルの岸辺での詠唱や最終幕フィナーレの2重唱における柔軟でコントロールの効いた弱声の使い方などもなかなかうまいものであった。
 アムネリスは、予定ではルチアーナ・ディンティーノが歌うことになっていたが、来日後に体調を崩したということで、この日はロシア出身のエカテリーナ・クバノヴァが代役に立った。2005年パリでブランゲーネ役によりオペラ本格デビュー、06年の東京オペラの森公演《レクイエム(ヴェルディ)》でソリストとして来日、バイエルンの08/09シーズンにアムネリスでデビュー、来日直前の7月に行われたスカラ座テル・アビブ公演でもアムネリスを歌ったということであるから、それなりの実績はある若手メッゾではあるらしい。高音は美声でそこそこ響きもしっかりしている。しかしながら、今回ダブルでアムネリスを歌うことになっている同じロシア出身のアンナ・スミルノワにもいえることなのだが、メッゾ・ソプラノにとって決定的に重要な中低音域があまり響かない。これでは、メッゾ出身のウルマーナとの声質の対比が鮮明でないだけでなく、権高な王女としてアイーダに対峙する凄味が全く感じられないのである。  ディンティーノも、私は今まで生で聴いたことがあるのはミラノと東京でのプレツィオジッラ役だけだが、それほど低音のドスが効くタイプではない。このオペラにおけるアムネリスの重要性をスカラのプロデューサーがどれだけわかっているのか、首をかしげたくなる。ボロディナやジャチコーワが無理だとしても、ロシアにはまだまだ強い低音を持った若手女声歌手がいくらでもいそうなものである。

 南アフリア出身のヨハン・ボータは、1965年生まれとのことだからすでに中堅。私はニューヨーク駐在中の1997年に《パリアッチ》のカニオで彼がMETデビューするのを聴いているが、あまり強い印象は残っていない。あの広い劇場でカニオをやれるだけの声は持っていることは確かで、今回も<清きアイーダ>の滑り出しは好調で、広いNHKホールで、力強く輝かしい声を十分に響かせていた。ところが、好調であるがゆえに色気が出たのであろうか、それともいつも彼はそのように歌っているのか、最後の<un trono vicino al sol!>を楽譜どおりにピアニッシモではいったところ声がかすれはじめ、最後のB(シのフラット)に上げたところで声が完全に裏返ってしまい、いったん息をついで、そのままファルセットで歌ってしまったのである。

 それまで、大きな拍手喝采を浴びせようと身構えていた聴衆は、冷水を浴びせられたように息をのみ、凍りついてしまった。テノールというのはこれだから怖い。私はこうした事故を何回も目撃している。しかし、ボータは別に風邪をひいていたわけではなさそうで、その後は何事もなく、むしろ快調に声を飛ばし続けていたので、最後のカーテンコールでは惜しみない拍手喝采を得ることができた。その調子からみると、あの<un trono vicino al sol!>も通常誰もがやるように、フル・ヴォイスで押し切ってしまえば全然問題なかったのだろうと思う。つまり4回転ジャンプに挑戦して転倒したようなものなので、(内心悔しだろうが)本人もケロっとしていられたのだろう、と思う。

 アモナズロのホアン・ポンスは、いつものように「声量はあるが、それがどうした」という感じのおよそ味わいのない歌唱であるうえ、演技においても、第3幕幕切れでアムネリスを刺そうとしてラダメスに止められ逃げる場面で、全く走ろうともせず、のたのたと歩いていくというやる気のなさを見せた。
 どうしてこの人にいつまでも第一線のヴェルディのバリトン・ロールの役がつくのかよくわからない。1カ月前にヴェローナで、アンブロージョ・マエストリの声も歌唱スタイルも圧倒的に格上のアモナズロを聴いたばかりなので、よけいにその感が強い。マエストリとまではいかないにしても、イタリア人でポンスよりマシで、しかもギャラだって安いバリトンはいくらでもいるはずなのである。スカラの人選は疑問である。  バス陣は悪くなく、特にマルコ・スポッティは深々とした響きのよい低音で存在感があった。ジュゼッピーニも第一声は立派なのだが、響きの持続性という点ではスポッティに負けていたような気がする。

 ゼッフィレッリの舞台は期待どおりの絢爛豪華で美しいもの。例によって、バレリーナが演じる巫女を重視する演出で、3人の主人公の運命を繰る霊的なものを象徴する。プログラム記載のゼッフィレッリの弁によれば、「アイーダの愛の力の前には神々でさえ無力であり、膝を屈しなければならないことになる」というのがラスト・シーンの意味するところである。そして「ヴェルディは最後に、最も偉大な、最も力強い無敵の神とは愛にほかならないことを、私たちに告げているかのようである」ともいう。
 私には(たぶん)キリスト教徒であるゼッフィレッリがこのような多神教的な解釈をしてみせるところが面白い。この古代エジプトという多神教的セッティングのオペラが何の違和感もなく受け入れられているイタリアという国はやはり、一神教を偽装しながらマリア崇拝や聖人崇拝という形でグレコ・ローマン的多神教の基盤をたくみに取り入れているカトリックの本家である、ということがよくわかるからだ。






愛媛4区 桜内ふみき 公認会計士サイト運営者は桜内ふみき氏をサポートしています



人間力★ラボ



「人間力」エピソード





ナビ1
ナビ2
ナビ3
ナビ4
ナビ5
ナビ6


芦川淳氏   自衛隊vs.人民解放軍 我らもし闘わば
芦川淳氏   原子力空母ジョージ・ワシントンに乗ってきた!
芦川淳氏  沖縄の基地問題など、国防を考える3
田代秀敏氏 「混沌の大国」中国と中国人を知る

神保哲生氏  今更なんですが、「ジャーナリズムとは一体何なのか」
三神万里子氏 メディアの「情報信頼性評価基準」を考える

山田恭路氏 自然派ワインに首ったけ
川村武彦氏+山田恭路氏 「天才の国」イタリア自然派ワインの真実


野中郁次郎氏 ナレッジ・ワーカー育成講座
本間正人氏  コーチングは日本の「やる気」を呼び起こすか
三ツ谷 誠氏  市場、個人およびカイシャの一般法則
織田聡 氏   カイシャ文化の現在を問う

「国ナビ」で作った予算対案を衆院本会議に提出/桜内文城 氏
竹中平蔵氏  なぜいつまでたっても「改革」できないのか
中林美恵子氏 アメリカ議会に見る「機能する立法府」のあり方
瀬口清之氏  パブリックマインドとは何か

小西達也氏 「チャプレン」という仕事 ヴェルディ&ワーグナー生誕200年 記念座談会
爆笑座談  オペラ愛好家とはいかなる人種か?
METを観たら、METを読もう!
2013年夏のヴェローナ音楽祭/武田雅人
2010年夏のヴェローナ音楽祭/武田雅人
2007年夏のヴェローナとマチェラータ音楽祭/武田雅人
偏愛的オペラ談義

ネット起業! あのバカにやらせてみよう
ベネチア貿易船復元計画
江戸城再建計画
『日本の借金』時計への勝手リンク
12-13イタリア旅行
11ヨーロッパ紀行
04ヨーロッパ紀行
02ヨーロッパ紀行
フィリピン有情
佃点描
ぼくはこんな記事をつくってきた
余は如何にして編集者となりし乎
雑誌づくり講座

4秒でわかる Pin Point ワールドカップ2014
4秒でわかる Pin Point ワールドカップ2010
日本のサービス、ここが間違ってる
爆笑! 四酔人サイト問答
女子大生版「日本のカイシャ、いかがなものか」 丸山真男と日本の外骨格
藤原正彦先生論文「国家の堕落」を読む
金融工学は製造物責任の夢を見るか?
酒飲みの「旅行話」
台灣好好 日本よりも日本らしく
さる名門女子大における恋愛論講義
人間力営業
「人間力」101本勝負メールマガジン
「人間力」とは、大人になることと見つけたり

最後に勝つのは「新日本人」だ
「新日本人/旧日本人」モデル
「新日本人」論 対話篇
「カイシャ主義」に挑戦! “オープンソース型ビジネスマン”の生きる道


誰が神を殺すのか
構造改革とは意識改革である
現代都鄙問答
一億総中流の倫理崩壊
完成! 「新日本人ルネサンス論」
日本人の田舎者意識の精神史的地位

鈴鹿市の見える歯科治療・歯科CT 仙川駅前の皮膚科・気管支ぜんそく 長引く咳  東京都 高輪矯正歯科・八重歯  税理士法人浅野会計 名古屋市の相続承継・会社設立 ひかり歯科 千葉のキッズ予防歯科 スタッフ 匝瑳市 デリバティブ 仕組債・仕組預金の商品分析に関する解説 他社株転換債 社員研修 マナー研修 身だしなみ愛西市近くの審美歯科

銀座の老視矯正 コンタクトレンズ制作眼科豊田市にある内科・点滴・相談漏斗胸・胸郭変成の外科治療専門サイト千葉市 心療内科・椿森・うつ医療ホームページ/クリニック/医院/診療所の集患増患コンサルなら

金沢区/内科 かぜ国立市/内科 糖尿病治療 中央線介護の管理者/アルバイト/パート|三重県鈴鹿市・安心シンプルな手術法、漏斗胸治療デザイナー求人戸塚クリニック 横浜市戸塚区 内科笹塚 メガネは眼科で相模原市南区の内科 動脈硬化

鶴見区/整形外科 リハビリ科浜松市/ALTA療法 痔の相談 薬物療法青森市役所横/横内耳鼻科医院開業セミナー
大阪市の肛門科専門医取得・静脈瘤治療・内視鏡検査アルタ療法講座 治療概念町田駅近くのたむら整体院サイト 顎痛松山の漏斗胸治療・救急科案内ル・サロン 柿本葛西駅/整体 頭蓋オステパシー 相談怪我やヤケドなら形成外科へ