なぜオペラ座は街の真ん中にあるのか
運営者 帰国中の手塚さんが家に遊びに来られました。せっかくなので、何かしゃべって行ってもらいたいんですけれど。サイトのネタがないんですよ。
手塚 いきなりそんなこと言われてもなあ。じゃ、肩の力を抜いて、オペラの話でもしますか。
運営者 このサイトの読者の中では、オペラの理解者はかなり少数派みたいなんですよ。だから、素人にもわかるようなオペラの意味論について話せればいいですね。
じゃ、この辺からいきましょうか。どうしてヨーロッパの町では、オペラ座が街の真ん中にあるんでしょうか。
最初は王族の楽しみだったわけですが、王様が消えた現在でもオペラ座は町の真ん中にでんとそびえ立ってるじゃないですか。どうして取り壊して商業ビルにして収益をあげようとしないんですかね。
手塚 それはやっぱり、大衆がオペラを支えているからでしょう。バイエルン国立歌劇場は、ヒトラーが蜂起したミュンヘンにあって、第二次世界大戦で徹底的に破壊され灰燼に帰しました。それが今では、世界で最も美しいオペラ座の一つとして復活しています。それは、あのビール好きのバイエルン人が、国立歌劇場を再建するためにビール1杯ごとにいくらかの税金を払うことに合意をしたから。
オペラは吉本興業と同じで、大衆が支えているわけ……。
運営者 なるほど、「オレはオペラなんか聞かないよ」という人間がいたら、そいつらはビールにオペラ税がかけられたら怒りますよね。でもそうならなかったわけですか。
手塚 全く跡形もなく爆撃で砕け散ったオペラ座を、ヒットラーの第三帝国の時代そのまんまに戻したんだから。ものすごくきれいなシャンデリアがあって、大理石の階段があって。それで再建の時には、オペラ座の前の広場の地下に大駐車場作ったらしいよ。まあがれきの山かた再建したという意味ではウィーンの国立歌劇場もおんなじだけどね。
運営者 ウィーンは爆撃で、天井が落っこちたんですよね。
手塚 バイエルンが素晴らしいのは、シャンデリアですよ。これ、ほとんど真ん中くらいまで下がっているんだけど、舞台が始まる前に静かに上がっていくんだね。
運営者 メトロポリタンのシャンデリアと同じですね。
今、バイエルンの引っ越し公演のときのプログラムを見ながら話してるんだけど、このプログラムって演目よりもなによりも前に、歌劇場の写真がどっさり載ってるんですよね。よほど自慢なんだな。
手塚 貴族がこれを作ったというんだったらわかるんだけど民主主義の時代に国民の税金で再建したのだからね。この天井だって、全部マイセン風の装飾なんですよ。