やはりこの辺から話はワーグナーに…
手塚 ところで岡本さんは去年来日したベルリン・フィルの「トリスタンとイゾルデ」は聞きに行かなかったの。
運営者 勘弁してください。去年はスカラ座の「運命の力」だけですよ。
手塚 アバドのトリスタンじゃね。色気がないよ。健康優良児みたいで。で、スカラ座はどうだった?
運営者 素晴らしかったですよ。演奏が予想以上によかったな。なんせ昔、パリでジュリーニがペートーベンの6番、7番を振ったのを聞いて爆睡したことがありますからね。それがトラウマになってて……。
手塚 スカラ座のトランペットというのは、どうしてあんな輝かしい音がでるのかな。
運営者 レクイエムでさんざん練習してますからね(笑)。あれがなかったらさみしいじゃないですか。
手塚 そうだね。ベルディはトランペットにこだわりのあった人だよね。ブルックナーのホルンとベルディのトランペットは双璧っていう感じがするな。
運営者 ワーグナーだったら。
手塚 ワーグナーは、ワーグナーチューバホルンですね。いや私僕は、ワーグナーだったら、バスクラリネットとかイングリッシュホルンとか、そういう世界の方がいいかな。
運営者 僕はやっぱりホルンですね。しびれますね。
手塚 それはまだまだ、お主お若い(笑)。例えばパルシファルの「聖金曜日の音楽」のイングリッシュホルン。あるいはワルキューレも第1幕でノートゥンクのライトモチーフを最初に吹くのはオーボエなんですよ。後はほとんどトランペットで吹くドミソの信号ラッパみたいなの。ノートゥンクという剣が木に刺してあって、そこに光が一筋当たった時に意味深げに聞こえてくるんですよね。
運営者 トネリコにさしてあるんでしたっけ。
手塚 宇宙の創生神話にある、宇宙の根源につながっている木なんですよ。
運営者 それが何であそこの家の中にあるんですか(笑)。
手塚 うん、それはモチーフだからいいんだよ。まあ御柱みたいな神木だと思えばいいじゃない。
運営者 そうですか、何だかわかりませんが、わかりました(笑)。