片山 だいたいワグナーの幕間は男性トイレのほうが混雑するんですよ。イタリアオペラだとやや女性、バレーだと圧倒的に女性のトイレが混む。
T女史 「ブルックナーライン」と呼ばれてるらしいですよ。もしくはワーグナーライン、マーラーライン。そういうコンサートは男性比率が高いので、男性トイレに行列ができるんです。
武田 その点イタリアオペラは、絶対に女子トイレのほうに列ができている。歌舞伎座もそうだけど。
T女史 私はよくわからないのですが、男性は年をとるとお手洗の時間が長くなるんですよね。だから若い男性が多いロックのコンサートでできる行列とは、また違うわけです。それがブックナーライン。
I女史 確かにニューヨークでもワーグナーは男性の方が多いし、しかもみんなカップルで来てる。
武田 でもアメリカでも、バレエとなると女性が圧倒的に多い。
手塚 ゲイのカップルが多いし。
運営者 そうすると、ヴェルディは男性なんですか女性なんですか?
みなさん ワイガヤ (男性だ、女性だ)
手塚 本質的には女性ファンが多いんだろうけど、歌っている歌手については男性バリトンが多いんじゃないかな。
片山 ジェンダーバランスが一番とれているかもしれない。
加藤 『ようこそオペラに』(春秋社)で書いたんだけど、新国立劇場の担当者に聞いたら、やはりヴェルディとワーグナーでは客層が違う。ワーグナーの場合は男性が多くて、幕合は議論しているのでプログラムは売れるがアルコールは売れない。
イタオペの場合はちょっと年齢層が高いご夫婦が多くて、アルコールは売れるがプログラムは売れない。そして帰りに「タクシーを呼んでくれ」と言われることが多い。もちろん新国立劇場ではタクシーを呼んだりはしませんが、そういうふうに声をかけてくる人がいるそうです。
ワーグナーや。「ピーター・グライムズ」などの時はまずそんなことはない。
武田 「ピーター・グライムズ」を聞きに来る女性なんか、ほとんどいないし(笑)。
池原 私は結構、ブリテンのオペラはドラマ展開が面白いので、観ていますけど。
運営者 では、一般的に女性から見るとワーグナーってどうなんですかね。ドイツ語のできるT女史さん!
T女史 やっぱりさあ、知ってるのはいいことだと思うけど、あんまり「好きだ」って言いたくないよね。
加藤 ふつうのドイツの女性に聞いたら、ワーグナーと聞くとちょっとぎょっとしますよ。「ワーグナーのオペラって長いし、何を言ってるかわからないし」という感覚ですよ。ドイツで上演するときにすら字幕付けてるし。
運営者 ニュルンベルクのホテルで、「ハンス・ザックスの像ってどこにあるの?」とフロントの女の子に聞いたら、「ハンス・ザックスって誰ですか?」と聞き返されましたからね。
手塚 それはワーグナーの問題じゃないよ。ハンス・ザックスはニュルンベルクに実在した中世の偉人なんだから。
T女史 女性のワーグナーファンは、女性のオーディオファンと同じくらい居ないんじゃないかなぁ。
加藤 まあ、居ないことは無いんだけど。
運営者 歴女がいるんだから、ワーグナーファンがいても不思議じゃない。
片山 ただ、トータルの比率はやはり少ないよ。
加藤 でも、想像よりはいると思うけど(笑)。