運営者 プッチーニについては、プッチーニはヴェルディとワーグナーと足して2で割ったようなものという線で決着ですか?
加藤 そう思う。プッチーニ=コンパクト・ヴェルディ+マイクロ・ワーグナー。
武田 プッチーニはすごくよく劇場の効果を考えている作曲家ですよ。
片山 もし彼がビジネスマンだったらマーケットに出す前からどの商品が売れるか、分かるようなビジネスマンだったと思う。天才的な面があります。
I女史 スティーブ・ジョブス的な。
片山 テストマーケティングしたわけでもないのに、たいしたもんですよ。
武田 アメリカの映画音楽の元祖はプッチーニだと思う。
片山 「ミュージカルの元祖は、プッチーニだ」と私は勝手に言ってます。
加藤 「ボエーム」なんて、ミュージカルだもんね。
池原 実際にこのストーリーは、ミュージカル版「レント」もありましたね。
T女史 だから歌手の歌いやすさなんかは、あまり考えてない。音程の上がり方を見てみると、歌手の喉のことなんか考えてないと思いますよ。
加藤 トスカ歌いの人は、けっこうワーグナーも歌うでしょ。最近だとマルティナ・セラフィンみたいに。
武田 とくに「トゥーランドット」なんかは・・・
手塚 「トゥーランドット」は、まるっきり「トリスタンとイゾルデ」と一緒ですよ。
運営者 では、ヴェルディやワーグナーの後継者的なオペラ作曲家というのは、いるのでしょうか?
手塚 ヴェルディはオペラ作曲家としては完成品だったんじゃないの。
片山 ワーグナーの後継者がリヒャルト・シュトラウスとはとても言えないし、シェーンベルクでもないだろうし。
加藤 ただ、ヴェルディの前後のイタリアオペラで決定的に変わった点は、ドラマ性が無視できなくなったことです。ロッシーニとヴェルディの「「オテロ」」の結末を聞きくらべればわかるけど、ドラマ性が全然違うわけで、ヴェルディの後の作曲家はこれを避けることは、できなくなってしまった。
運営者 ヴェルディの後は、ヴェリズモになったんですよね。
加藤 ヴェリズモだって、ヴェルディがいなければ出てこなかったものなんです。
片山 だから、ドイツオペラを会社に例えると、代表取締役兼CEO兼COO兼CFOがワーグナーで、シュトラウスは部長さんで、ベートーベンが課長で・・・
運営者 フンパーディンクは?
片山 係長くらいでは(笑)。
一方イタリアは、会長兼CEOのヴェルディさんがいて、社長兼COOのプッチーニさんがいて、ロッシーニさんが常務で、そういう感じで整然としているイメージかな。
加藤 ベルカントが好きな人は「ロッシーニが最高!」と言いますけどね。
武田 「ベルリーニが最高だ」という人もいる。