運営者 それでは、ぐだぐだになった座談会を立て直すためにですねえ、最近の演奏としてメトロポリタンオペラはどうなってます?
I女史 メトロポリタンに限らず全般的に目立つと感じているのは、ロシア系の歌手がすごく増えてきてることです。
全員じゃないけど、極めて優秀だけど似通った歌唱の人が多い。
加藤 この間マリインスキー劇場に行った時に思ったんだけど、どの歌手も日替わりでもなんでもやっちゃうんですよね。
歌手のひとりにインタビューして驚いたんだけど、例えば彼がイタリアに行って、スタジオーネ方式で同一のオペラを何度も上演すると、退屈しちゃうんですって。ふだん日替わりでいろいろやっているから。すごいパワーだなとびっくりしました。
武田 ネトレプコはどうよ?
I女史 ネトレプコは、美声でカリスマ性もあると思うけど、けっして技術的に優れているとは言いがたい。
加藤 だって、ネトレプコの歌は何言ってるんだかわかんないんだもん。ベルカントじゃない。
武田 魅力はあると思うけどなぁ。
加藤 魅力はあるし、ビジュアル時代のプリマというのはわかるけど。
I女史 結局彼女の舞台を見に行く人は、オペラを見に行っているというよりは、ネトレプコを見に行っているということです。
運営者 なるほどー。
加藤 だからネトレプコが好きな人は、もちろん全員じゃないんだけど、ネトレプコを見たくてオペラに行っているので、他の歌手にはあまり興味がない人が多いんじゃないかな。
I女史 そういうのがきっかけでオペラを見る人が増えるのは歓迎なんだけど、でもあれが究極かと言われると・・・
加藤 全然違いますよ。
武田 やはり今は実力のあるソプラノといえば、ディアナ・ダムラウ。ダムラウは本物だと思う。
みなさん そうですよね~
T女史 あと、バルバラ・フリットリとか。
I女史 ルネ・フレミング。
T女史 フレミングはケイティ・コーリック的なアメリカすぎるものを感じますが。
武田 でもフレミングは、ネトレプコが来る前はメトロポリタンの女王だったでしょ。
加藤 女王の時代がちょっと短かくなかったですか?
武田 フリットリとも役柄がかぶっているし。
ヴェルディ歌いのソプラノでは、ラドヴァノフスキー。これはアメリカ人ですが、グレギーナの後を継ぐのが、同じウクライナ出身のモナスティルスカ。彼女は有望ですね。
池原 モナスティルスカは「アイーダ」でメト・デビューしたばかりですが、大好評でした。
I女史 だいたい「何とかの女王」なんていうのは日本だけですよ。 英語にはそんなフレーズは全然ありません。
池原 よく、「何とかの貴公子」というのもありません?
運営者 だれか勝手に言い出す奴がいるんだな。
加藤 バッハが「音楽の父」で、ヘンデルが「音楽の母」というのも、一体どこから出てきたのやら。
ドイツでは、そんなことは言ってません(笑)。
片山 両方の顔を立てましたみたいな。
「世界の三大なんとか」というのも日本だけですよ。
武田 単なる「3 Tenors」なのに、それが日本だと「3大テナー」になっちゃうんだから・・・