広場の一角には、拷問博物館があり、拷問器具を展示しているらしい。これも立て看板を持って立っている人間がいるのでわかったことだ。拷問博物館には、ご丁寧にも蜘蛛とサソリの博物館が併設されているらしい。どうやらこの街は、観光客をバカにするためにできているようなところもなきにしもあらずだ。なんかばかばかしくなってきた。仕掛け時計で有名な市役所前には、チェコグラスの大きな店があって、日本人スタッフもいるようだ。「日本に船便で送るとどれぐらいかかるのか」と訊くと「1kg当たり1300円だ」そうだ。
仕方がないので、カレル橋を渡ってみることにする。途中で手袋と帽子を買って橋に向かっていると、なんだかおっさんが「日本人か」と話しかけてきた。そうだと言うと、「中田が」とか「名波が」とか言ってくる。うるさいので、「俺はサッカーは嫌いだ。ほっといてくれ」という。観光客相手の詐欺師だろう。これからは、「俺は北朝鮮から来た」と言い張ることにしよう。
カレル橋は、15世紀初頭にカレル4世がつくった古い古い石の橋である。全長520メートル。モルダウ川の眺めは、まことに寒々としている。橋の欄干には30組の聖人たちの像があるのだが、曇り空の下で、どの像も雪をいただいていて、寒々しいこと著しい。
日も暮れかかっているので、店を出している似顔絵描きたちも引き上げようとしている。
橋を渡って旧市街に行き、トリムに乗って新市街の方に戻ってくる。そこから地下鉄で、また広場の方に戻ってきて、適当に探したホテルの中にあるレストランで飯を食べる。高校生ぐらいの女の子が1人で店番をしている。まずもちろん、チェコに来たらピルスナービールを飲まなければならない。スープを呑んで、何かチェコの料理をと頼んで、奨めてもらったものを食べる。なにやら肉の上にクリームが載っていて、少し甘酸っぱいソースがかかっている。面白いのは耳を切ったパンが載っていて、これをソースに浸しながら一緒に食べるようになっている。微妙な味だが気に入った。
店番の娘は、非常に愛想が悪いというか、愛想がない。サービスという感覚は、この国には存在しないようだ。でも何か家庭的な雰囲気のホテルで気に入ったのでここに泊めろと言うと、今日は満室だという。適当に歩いて、ユースホステルに泊まる。安いのだが、部屋が清潔で申し分はない。