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02ヨーロッパ旅行ウイーン・プラハ編 1月16日
グーラシュを食べそこねて「魔笛」を見る


 今日は何としても本場のグーラシュを食べたいと、ブダペストに行こうと思う。
 ホテルをチェックアウトするのだが、小銭がいっぱいあるので、どうしようと言うと、じゃ小銭で払った上で残りをカードで払うということにすればいいですよと言われて、そんなこんなで支払いに手間取る。
 地下鉄でウイーン西駅に行く。ところが1分遅れでブタペスト行きの電車は既に出ていってしまったことを知る。時間を間違えていたのだ。しまった。どうしようか。

 いろいろ思い悩んだが、結局ブタペスト行きは諦める以外にはない。せっかく事前に友人にうまいグーラシュの店を何軒か教えてもらっていたのに、実に断腸の思いである。
 仕方がないのでとりあえずザルツブルグ行きの電車に乗り込む。電車の中で時刻表を見て何とかミュンヘンまで行けないかなと計算するが、どうみてもやっぱり行けないということがわかる。リンツで降りる。モーツアルトが交響曲にしているぐらいだから、この街には何かあるのではないかと思ったのだが、どうにも何もなさそうなので、またインターシティーに乗ってウイーンに帰ってくる。時間の無駄としか言いようがない。

ミュージアム・クオーター・ウイーン さて、そうするとどうするか。美術史美術館の裏側に、ミュージアム・クオーター・ウイーンという新しい施設ができていたので行ってみる。
 いくつかの見本市場や、美術館のコンプレックスのようだ。ハプスブルグ時代の大きな建物を利用しているのだが、その広い中庭の中に、白と黒の対照的な外観を持った大きな立方体の新しい建物をつくり、これを美術館として利用している。外から見てもその新しい建物は見えないので、中に入って直面するとびっくりする。

 その白い建物の方が、レオボルド・ミュージアムという美術館で、クリムトやエゴン・シーレを中心とした現代美術の美術館になっている。特にエゴン・シーレのコレクションは充実していて見応えがある。この人も貧乏なうちに28歳で死んでしまった薄倖な人だが、まあどうしてここまで暗い絵が描けるのだろうかと思うほど暗い。しかしその暗さには表情があって、人をひきつける。どうにも魅力のある画風である。

 それからまたマリア・テレジア像の横をすり抜けて、市内電車に乗りぐるりとリングを1周する。この市街電車も、ウイーンの名物で、なんとも味わいがあるものだ。しかし今回驚いたのは新型が出ている。でもこの電車だけは変わらずに残ってほしいものだと思う。
 オペラ座の前まで戻ってきて、カールスプラーツから地下鉄に乗り、途中でまた市街電車に乗りついでフォルクスオパーにやってくる。
 ここも国立劇場で、主にオペレッタを上演しているが、いくつかはオペラも演じている。今日は「魔笛」である。ベネチア行きの電車は10時半に出るので、9時半までは見ることができるだろう。天井桟敷のチケットを、チケットオフィスで買う。17ユーロ。
 近くのレストランに出かけて、飽きずにグーラシュ・スープと、クリームソースの上に豚肉が載っているのを食べる。このレストランは、ペットを連れてきても良いらしく、大型犬を連れた女性が隣に座った。そうすると驚いたことに、店のウエイターがペット用のご飯皿に水を入れて持ってきた。

 7時、「魔笛」開演。
 シュターツオパーや楽友協会はコートの預け賃が90セントだったが、フォルクスオパーは1ユーロ02セントである。こちらの方が高いというのはどうにも納得できない。おまけにスタッフの応対も二流以下である。感じが悪い。
 フォルクスオパーはドイツ語でしか上演されないので、字幕装置などはない。劇場は古くさいし、高架鉄道のすぐ横に立っていて電車が通るとガタガタ音がする。観客の方も一応ドレスアップはしているものの、明らかにシュターツオパーとは違って庶民的である。とは言え出し物を心から楽しんでいるという感じが伝わってくる。
 それから、天井桟敷からは丸見えなのだが、PAのスピーカーが設置してある。スピーカーの近くに座っている奴に「あそこから音が聞こえるか」と訊いたが、気がつかなかったとの返事。しかし間違いなく舞台の音を集音して増幅して流れている。役者が舞台の奥の方に向かって声を出していても、彼が正面を向いて歌っているように感じるから誠に妙な感じである。

南駅の サンマルコの獅子 南駅の サンマルコの獅子  それでもって、私は「魔笛」はあまり好きではない。この芝居はフリーメーソンの入信の儀式を戯画化したものだろう。ちゃんとした儀式については、トルストイが「戦争と平和」の中で細かく書いている。演出は、まあさして現代的でもないという感じ。面白かったのは、最初に出てくる3人の夜の女王の従者は修道女の格好をしていること。大蛇は小ぶりの蛇になっていて、気がつくとパミーナの局部に噛みついている。フロイト的解釈である。
 まあそんなことで、パパゲーノの歌がすんだあたりで9時半になったので途中で抜けて電車と地下鉄を乗り継いでホテルに帰ってくる。
 トランクを受け取って、タクシーで南駅に。10時30分発のサンマルコ号に乗り込む。4人1室のコンパートメントだが、満室である。隣は韓国人女性だ。とっとと寝る。

 



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