1時間ほどで空港に着き、チェックインして商店街で靴を買い替える。空港ビルは国旗の色である青と白を基調とした内装である。しかしこの建物の外観は全くもって建築センスというものを感じることができないものだ。これに比べれば日本の空港の方がよっぽどましである。
商店街の中にはすでにオリンピックストアという2004年のオリンピックグッズを扱う店ができていた。歩き疲れたので、15ユーロ払ってラウンジに入って休む。飛行機は20分の延着である。手紙を出し忘れていたので、受付のお姉さんに頼んで出してもらう。2通で1ユーロ。ボーッとしていたら、「搭乗が始まったよ」とお姉さんが知らせに来てくれた。
満席のMD80はあっさり離陸して、エーゲ海の島々を眺めつつ、ローマ・フミチーノ空港に着陸する。
今日は暑いくらいだ。トランクが出てくるのがずいぶん遅い。いきなり「イタリアだなあ」と感じさせてくれる。空港の両替所で残っていたトラベラーズチェックを問題なく両替する。
空港からテルミニに行く電車の切符を買うのは長蛇の列である。うんざりしながら並んでいて、ふと自分がユーレールパスを持っていることに気がつく。並ぶ必要などないのであった。
15時37分に空港を出た直を行電車は、16時にテルミニに到着する。直行なのは良いのだが、テルミニの駅の一番端に到着するので、そこからかなりトランクを転がさなければ切符売り場までたどり着かない。切符売り場はやっぱりうんざりするほど並んでいる。
国際線の切符売り場の列に小一時間を並んで、7時発のウィーン行きの寝台車の切符を予約しようとするが、「クローズドだ」という。じゃあミュンヘン行きは、インスブルック行きはと訊くが、全部クローズドだという。コンピューターが受け付けないのだ。日本では考えられないことだ。「でも大丈夫、乗ればいいよ」と、おじさんはなぜかうれしそうだ。
じゃあ一体何のために並んだのだろうか。ひょっとするとイタリアでは切符は車内で買うというのが正しい利用法なのだろうか。
まあいいや、とりあえず何か食べようと思ってリストランテを探すがない。そこでBARでカリエンテ(「温める」という意)という細長いパンにチーズとハムを挟んだのを焼いてもらう。美味。丸いのがミラネーゼ、多分アロマが入っているのがアロマティカ。赤ん坊を連れた女性の物乞いが来たので、金をくれてやる。
7時、ウイーン行きの国際列車が入線した。列車で車掌に「予約がない」と言うと切符を見せろと言ったままどこかへ行ってしまう。
車両に乗ってスタッフに聞いても英語がわからなくて相当に不親切である。「二等の普通客車に行け」という。2等車で夜明かしなど嫌なので、「こうなったら意地でも寝台を確保してやる」と思って食い下がると、クシェットに連れていかれる。
クシェットの担当は英語ができる。6人部屋を1人で独占できるので、これは2等寝台よりも快適だ。指定料28ユーロ。シーツと枕が供給される。またミネラルウオーターが1本渡される。朝になると、パンとコーヒーを持ってきてくれる。扉には鍵がかかるようになっている。他のコンパートメントは電気が消えているのだが、みんなに7時から翌朝の8時まで13時間も眠ることができるのだろうか。不思議だ。寝っ転がって本を読んで過ごす。