偶然にも、古代のアゴラの遺跡で、デルフィで一緒だったシンガポール人の夫婦と再会する。昨日は一日島巡りをやっていたのだそうだ。記念写真を撮り合う。
遺跡の端っこにアゴラ博物館が建っている。この建物は瞠目すべきものである。アゴラに面して立っていたであろう建物を復元しているのだ。
建物の前のアーケードの部分が非常に広くとってあり、大勢の人がここで集い、立ち話をしていたのだろう。明治時代に集会条例が作られたように、何人かの人が集まって意見を交換し認識を共有するということ自体が、新しいものをつくる力を持っており、新しい考えは旧体制を打破するパワーを持っている可能性があるのだ。広場で政治が論じられたというのは、まことにもって理に叶ったことだと思う。密室に民主主義はない。
博物館の中には、発掘物が整理されて展示されている。特に陶片追放に使われた陶片が残っているのが面白い。陶片追放というのは選挙でリーダーを選ぶという考え方の反対概念である。そこまでして僭主制の出現を警戒したのだから、徹底している。それでもアテネの民主制は、衆愚に陥っていくのだが。
時間がないので、急いでホテルに戻る。途中で銀行を発見、トラベラーズチェックを両替したいと言うと、「手数料が17ユーロもかかるので、うちよりも銀行に行った方がいいよ」と言われてしまう。
11時ホテルで荷物をとって、道を渡り、ニューススタンドでバスの切符を買って95番のバスに乗り空港へ。
バスの窓から外を見ていて気がついたのだが、この街では改築中のビルの壁面を全部覆って広告を出している。現在アテネでは、オリンピックに向けて改築中のホテルが多いようだ。一番目立つのは、ユーロ導入についての告知広告である。その広告を見ていて、これから行くオーストリアがユーロ圏であるということを知る。実にユーロというのは便利なものである。
渋滞がかなりひどい。高速道路に入るとスイスイ走るようになる。この高速道路も、あまり見映えがしないものである。