1等車なので静かに寝ていけるだろうと思ったら、4人掛けの目の前に座ったのは2人の女の子を連れた母親で、この女の子たちというのが一時として静かにしていないとんでもないわんぱく小僧どもだった。えらい災難だ。ここはあきらめて、本を読んで過ごす。
列車はトスカーナの畑のうねりの中を滑るように進んでいく。2時間後、ユーロスターはローマのテルミニ駅に到着。インフォメーションで地図をもらっていると、さかんにホテルを勧める男がいる。こういうのについていくとどういうところに連れていかれるのだろうか。
タバッキで地下鉄の切符を買って、とっとと地下鉄に乗りこむ。何度も来てるので、さっぱり感動がない。ただテルミニは地下街がきれいになっていてびっくりした。とにかく人が多い。地下鉄も満員である。スペイン広場の駅で降りる。
ホテルは、スペイン広場から一歩入ったところにある。非常に便利なホテルだ。ロビーに入ると、2匹の人懐っこいテリヤが出迎えてくれる。とりあえず部屋に入ってシャワーを浴びる。
6時30分、着替えてちゃんとネクタイを締めて、フロントで「この辺に花屋はないか」と聞くと、「スペイン広場にはいつも花屋が出ているよ」と教えてくれる。スペイン広場の花屋に行って、「40ユーロでなるべく大きな花束をつくってくれ」と頼む。
そのでっかい花束持って、コルソ通りを横切り、アウグストゥス廟を左手に見て、ティベレ川の川岸のリペッタ通りへ。この街は目をつぶっていても歩ける。
呼び鈴をして、この街に住んでらっしゃる閨秀作家のSさん(古代ローマ通史を執筆中)のお宅にお邪魔する。書斎でしばらく話して、ご子息のトニー君にも4年ぶりに会う。アウグストゥス廟の近くにあるアウグストゥスというレストランへ。ここは近所にメディアが多いらしく、メディア関係者がよく来るのだそうだ。イタリア南部の方の料理の店で、ホンモノのモッツアレラチーズを出すということ、これと生ハムを前菜に食べる。このチーズは本当にうまい。あまりモッツアレラチーズは旨いと思ったことがないのだが、これだったらいくらでも食べることができる。その後ボンゴレを食べて、えびを焼いてもらう。これも本当に新鮮でうまかった。
レストランを出て、どこかバーを探そうということでポポロ門の方に歩く。ピラネージホテルというぴかぴかのホテルに行ってみる。宮殿を改装して作った新しいホテルということで、たいそう立派なものである。中庭の背後はボルゲーゼ庭園になっているので、広々としている。バーに行ってみるが、演奏が入っていてやかましいので、ここは避ける。
その近くのホテルのバーに行ってしばらく呑み、真夜中になって、またSさんのお宅に。赤ワインを出していただいたのを呑みながら、4時半まで話してしまった。「日本のワルを10人挙げよ」、これが次回までの課題だ。話は尽きないが、いい加減に辞去して歩いてホテルに帰る。