40分遅れで電車はナポリに向かう。ナポリも意外と遠い。
わたしゃ新幹線の感覚で、イタリア国内だったらば5時間もあれば端から端まで行くのではないかと楽観していたのだが、全然そんなことはないようだ。特に南の方は電車の便が悪く、移動に思ったよりも時間がかかるという事実を、トーマスクックの時刻表をペラペラめくりながら、やっとこの頃になって認識することができた。
早朝の通り 私はいつも旅をするとき、旅行を始めてからどのような予定にするかを考えるので、このころになって「ちょっとヤバイな」と考え始めた。しかし私は今までローマから南には行ったことがないので、ぜひシチリアまでは足をのばしてみたいし、しかしそうすると電車で移動していたのではどうも日程の帳尻が合わなくなるがと思うので、どうしようかなと悩んでいるうちに、6時半、電車はナポリ駅に滑り込んだ。
この時間になるとインフォメーションは閉まっていて、ホテルリストももらえない。どうしたものか。駅の中にある代理店に行って、「駅の周りにホテルはないか」と聞くと、「街の中心の方にあるホテルで良ければ」という話。どうやらそのホテルは安いし、他に探すのはめんどくさいのでそこを予約する。
駅前でタクシーを拾ってホテルに向かう。駅から中心街まではずいぶん街の中を走る。道が悪い。さらに旧市街に入ると、道は石畳で狭く、歩いている人の中をかき分けて進むような感じである。これはミラノとは全然違う、言っちゃ悪いがずいぶん後進的な町並である。この時間なのに、ずいぶん人がたむろしている。若者ばかりである。土産物を扱うような小さな店がいっぱいある。運転手は道がわからないらしく、ベッリーニ広場で何回も車を降りて道を人に聞いている。やっとホテルのある通りが見つかった。運転手にユーロを渡すと、どうやら初めて見たらしく釣りの計算もせずに「ありがとう」と言って行ってしまった。まあ構わないが。
「この辺の見当かな」とトランクをゴロゴロ転がしていると、ピッツエリアの中から若者が手招きしている。どうやらこのピッツエリアがホテルを経営しているらしい。
鍵が開かず揉めているところ ピッツエリアに入ると、人なつっこそうな若者が、「こっちこっち」とトランクをかついで厨房に入っていく。私もその後をついていくと、厨房から中庭に抜けて、階段を3階まで上がっていく。どうやらこの3階の一部分がホテルらしいのだが、カップルが入口の前で立ち往生していた。ホテルの鍵が開かないらしい。ホテルの人がやってきて、鍵をいろいろとひねってみるのだが、開かない。ジェノバから来たというカップルは、「どうやら玄関先で泊まることになりそうね」と言っている。やっと違うカギを持ってきて、入り口のドアが開いた。
「何日泊まるんだ」と聞かれて、「部屋を見てから決める」と言うと、部屋に案内してくれた。非常に大きなクラシックな部屋で、気に入ったので2日間と答える。部屋のカギと玄関のカギを渡してくれた。ナポリでは、カプリ島とポンペイが見たいと思っているので、どのようにすれば行けるのかと訊くと、バスの路線図をくれて、「このバスに乗ると波止場につくよ」と適当に教えてくれる。
トランクを閉めて部屋のカギを締めて外に出る。ナポリは南国だと聞いていたのに、存外寒い。適当に地図を見て、ピッツエリアに入る。ナポリといえばピザである。しかしいくらうまい店でも職人が移動してしまうと味が落ちるということで、店選びは運だめしということだ。とりあえず今日は、シーフードのパスタ(ヴォーチェ・エ・ノッテという名だった。「夜の声」?)と、メインにフィレ・オリ・ポルチーニ(キノコが載った牛のヒレ肉だな)を頼む。まあ普通の味である。明日に期待しよう。
ホテルに戻ると、建物の正面のでっかい扉が閉まっていて、かぎ穴がどこにあるのかよくわからないので、ピッツエリアに回って厨房を通ってホテルの部屋に戻る。