8時35分、列車はパレルモ駅へ到着。
ない脳味噌を絞って段取りを考えた。駅についたら、まずパレルモから出発しているであろうシチリア島内の観光ツアーを確認し、次にどうやらイタリア半島を電車で縦断して船に乗ってギリシアに向かう時間はなさそうなので、飛行機のチケットを買う算段を行い、最後にパレルモでのホテルの手配を行うつもりだった。
インフォメーションを探して行ってみると、ここではホテルのことは分かるのだが、どこに旅行代理店があるかとか、シチリア島内の観光ツアーについての情報などは一切判らない。わかったのはパレルモ市内のことだけである。さて、どうしたものか。
とりあえず今日はパレルモに泊まるだろうから、ホテルだけ確保しておこうと、ホテルリストをもとに電話をしようとするのだが、公衆電話がテレホンカードを受け付けてくれない。電話会社が違うのでカードを受け付けてくれないのである。駅の中にあるのは、BT系ともう1社の電話ばかりだ。やっとイタリアテレコムのカードが使える電話を探してホテルへ電話する。4つ星のジョリーホテルにしておこう。
駅前でタクシーを捕まえて「ホテルまで幾らでいくか」と聞くと50万リラといわれて目を剥く。英語が出来る運転手を交えて話すと、15万リラの間違いである。
ホテルに着く。このホテルもかなり古いホテルなのだが、さすがに4つ星ホテル。部屋は広い。
ナポリのホテルではパソコンの接続ができなかったので、3日ぶりに接続しようとするが、電話機に書いてある外線発信番号が、破れていてわからない。掃除のおばちゃんに文句を言ってシールを貼り替えてもらい、外線回線発信番号が1番だと分かる。普通は0番だから、あてずっぽうで掛けても掛からないはずである。
チケットの手配を頼んでおいたウイーンのホテルから、「オペラのチケットは手に入ったが、ウィーンフィルの定期演奏会のチケットはブラックマーケットから買わなければならないので、定価の2倍程度になるがいいか」という問い合わせが入っている。ファクシミリで「問題ないからとにかく手にいれろ」という返信を書いた後、シャワーを浴び、フロントに持っていって発信してもらう。「旅行代理店はどこか」と聞くと、ホテルの隣だというので、歩いて行ってみる。
ホテルの隣にある建物は、立派な城塞である。その小さな入り口から入ってみると、確かに旅行代理店のオフィスになっている。16世紀に海岸に建てられた城塞の一部分を使っているのだ。レンガ造りの建物の壁はそのままに、床を直したり、中二階を作ったりして、天井の高い快適なオフィスを作っていった。
16世紀というのは、室町時代のことである。これもすごいことだ。何の気なしに入った旅行代理店だが、パレルモではここで一番時間を潰すことになるとは思いもしなかった。
代理店のカウンターには英語の達者な若い女の子と、おばさんが座っている。「シチリア島内を巡るツアーはないのか」と聞くと、ここで個人的に組成しなければならないとのこと。パッケージツアーはないらしい。とすると、今回私は免許証を忘れてきてしまったので、レンタカーが借りられずシチリアの内陸部のギリシャの遺跡などを見に行くのは難しいことになってしまう。どうしたものか。
「ではギリシャのアテネに向かうにはどうすればいいのか」と聞いてみる。シチリア島内には、パレルモとカターニャの2つの空港があり、どちらから出発するにしても1度ローマを経由してアテネに向かなければならないらしい。シチリア=アテネ直行便というのはないわけだ。しかしカターニャまで行けばシチリア島内を見ることができる。バスで3時間で行けるというのでとりあえず、カターニャからアテネに行き、またローマに帰ってくる飛行機の値段を聞いてみる。そうこうしているうちに1時間近くたってしまった。ここの代理店でレンタサイクルを貸していたので、これを借りる。