FJのブランドアイデンティティ
で「FJを秋に出す、創刊まで半年しかない」と。「編集部員って誰?」って聞いたら、「この人たち5人です」と紹介されたんですよ。
それで、それがどういう人たちだったかというと、まず完全に素人なんですよね(笑)。どういうバックグラウンドかといったら、金融機関出身とか、あと「大学院出てすぐ来ました」「イギリスの大学に6年間、出てすぐ来ました」。ムダに高学歴なんですよ(笑)。それで、みんな英語出来るんですよ。要らないっていうんですよね(笑)。だって日本語の雑誌なんですから。
まあ、まず部員を戦力化しなければならない。それが一つ。
もう一つ考えなきゃいけなかったのが、4月の1ヵ月間に、じゃあわれわれがつくろうとしてるものは一体何なのよというのを、「ブランド・アイデンティティ」っていう言い方で考えたわけです。
なぜブランドかというと、雑誌ってブランドなんですね。雑誌ってモノだとみんな思ってらっしゃいますよね。違うんです。
雑誌を買う人は、「この雑誌だったら大丈夫だろう」というふうな感じで不見転で買う。だって、今もう立ち読みしませんから。だから、「FJ買っときゃいいだろう」という意識って、ブランドなんですよ。
同じように、広告主も「広告打たなきゃなあ。じゃあFJにでも出しとこうか」という意識にするのが、ブランドなんです。
だから、ブランドをどうやって作るのかというのを、内側にいるスタッフにもわかるように、外部にもわかるように、まずアイデンティティを言葉で定義して、それに合うようなものを作らなければならないというような手法ですよね。
それで、1ヵ月議論をして出たブランド・アイデンティティというのが、3つなんですね。
FJで扱うのは「企業経営」の話だと。それも真っ当でなければならない。まともな経営をしている世の中を動かすリーダーのための、月刊誌としての経営論をきちんと取り上げる。
2番目は、「資産運用の王道」。つまり、資産運用について掲載している雑誌はいっぱいありますよと。だけど、王道っていうのはやっぱりデイトレーダーじゃないんですよね。デイトレーダーは、特殊な能力を持っている人ができる。特殊な能力と暇がある人がやるもんであって、そうじゃない普通の人ができることっていうのを取り上げたいなと。
もう一つは、「一流の人生を極める」という視点が欲しい。やっぱり、お金を持っている人は一流のものを知ってるわけですから、そういうふうな、何て言うんですかね、B級グルメを紹介してもしょうがないじゃないかと。本物を知っている人間が「これはいい」と言えるようなものを紹介したいなと。この3つがブランドアイデンティティのなかの、「コア・アイデンティティ」ですね。
それを実行するための「拡張アイデンティティ」という言い方をブランド論ではするんですけれど、これらをやるためにわれわれが心掛けなきゃいけないのは、まずミッション、使命を持つことだ。
次に誠実でなければならない。誠実であるというのは、読者にとってもそうだし、取材先にとってもそうだし、クライアントにとってもそうじゃなければならない。つまり、騙しをやってもしょうがないだろうと。だからわれわれは、安易な叩き記事はやるつもりはないわけですよ。いいことをやってる人、あるいはちゃんとしたノウハウを持ってる人がいれば、それをきちんと紹介すればしっかり参考になるわけで、ことさら何か煽情的に、火のないところに煙を立てるようなことをやってもしょうがないじゃないかというふうに思うわけですね。
3番目に「プラクティカルでなければならない」と。絵に描いた餅じゃダメだから、読んで「ああ、そういうやり方もあるんだね」というのがわかるものでなければならない。
4番目に「トゥルー・ジャッジ」。「これはいいものです」というふうに言えるものを載せていこうと。悪いものを載せちゃあいかん、というブランドアイデンティティを最初に決めたんです。ここから外れるものは載せないようにしようというふうに考えた。礎石ですよね、礎石をこういうふうに置いて、雑誌づくりをそこから考え始めたということなんです。