関係構築力とコピーライティング力
で、FJはどうかっていうと、まず何もない状態なんですよね。5人素人がいる、困ったなあと(笑)。
それで、まずそこでご説明しなければならないのが、編集者の仕事っていうのは何なのかという話なんですね。
まず雑誌っていうのは、まあパッと見て「記事が載ってます」とわかりますよね(笑)。ということは、書いてる人がいるんだ。編集者は、自分で書いてなかったりするわけですよ。ライターが書いてるわけですから。それに「写真があるんだ」と見ればわかりますよね。写真はカメラマンが撮ってるわけですよ。「あ、きれいにデザインしてある」。デザイナーがいるんですよ。
じゃ、編集者は何をしてるんだという話なんですよ。よくわかんないですよね。編集者がやってることっていうのは(笑)、
「まず企画を立てましょう。ネタがいるぞ」と。だから、編集長が「次は、じゃあマーケティングの記事を作るぞ」と言った時に、「はいはいはい! じゃあ僕、BMWからダイエーに行った林文子さん知り合いだから、林さんにインタビューしまーす」「よし、やれ」というふうにワーッと企画が上がってきて、それを取りまとめて特集にするというのが雑誌づくりであったりするわけなんです。
だから、大体週1回編集会議をやって、あるいは月1回。その編集会議に各部員がネタを自分で持って来て、ワーッと紙で回して、みんな配り終わったところで編集長が「よし、じゃあ今日は石井くんから」と言って、それで石井くんが説明をして、で、これやりたい、あれやりたいと。みんな説明し終わって、「じゃあ、これとこれ合わせたら企画になるじゃないか」というふうな感じで部員からネタが上がってくるというのが、企画力がある編集部員がいる編集部の場合であって。FJっていうのは、素人の集まりですからそういうことはなかったんですね(笑)。
普通の編集部というか編集長というのは、そういうふうに楽な仕事なんですけど、そうじゃなかった。
企画力ってじゃあ何なんだろうというふうに思いますよね。編集者が企画をやろうとする一番深い動機は何なのかといったら、確信があるわけじゃないですけど、まず一つは「雑誌が好き」っていうのがないとダメなんですよ。このベースにあるのは全部、「雑誌を作りたい」と思ってないとダメですね。「自分は雑誌が好き」と。もう一つは、自分の体験に基づいた問題意識というのがベースになければならないですね。そこから、じゃあこれをやろうとか、こういう角度からこれに切り込もうというふうな、ポイント・オブ・ビューが出てくるはずなんですよ。
それがなかったら企画にならないですよね。ストレートニュースじゃないんで。通信社だったら、「何かが起こった」「よーし、取材行け」「はい、見てきました」「書け」、記事をデスクに上げて終わりと。月刊雑誌はそうじゃなくて、ストレートニュースの部分というのは極めて少ないですから、まず今のところFJにあまりないんですよ。これから作ると思います。だけども、でっかい記事っていうのは、インタビュー記事でもFJの場合はひねりを入れてます。だから、そこに何かの編集側の、インタビュアー側の意図が入ってる。その部分で、企画としてまとめるというふうなものにしてるわけです。
だから、各人が企画を考える、提案する。あるいは、編集長やデスクの指示に沿ったネタを集めてくることができるようになる必要がある。
特集主義の雑誌にとって一番ありがたいのは、特集を作ってくれるデスクなり部員がいたら、編集長は一番楽なんですよ。僕は、結構プレジデントではそれをやってて、「もう面倒くさいから、他の人いらないから私一人で特集一個作ります」みたいな感じでポンと作ったりしてたわけですよね。そうすると、ヒラの部員だった時は、上から何か言われなくて済むんで、デスク飛ばしてゲラ作って編集長に持ってって、「見てください」と言ってOKもらったらそれで出せるわけですから、その方が楽ですよね。
そういうふうに、基本は、雑誌の編集者の場合はそのページに自分で責任を持つんです。それが読者に受けたら、自分の手柄になるわけですよね。だから、「いいネタを作ろう」というインセンティブが働くわけです。べつにチームでやってるわけじゃないんですね、基本的には。