猫たち
一旦、K家に戻り、TAXIを呼んでもらう。雨が降っているので、電車をあきらめたのだ。午後5時、別れを惜しみつつTAXIにスーツケースを押し込んでシェラトン・ニューヨークに向かった。メーター制ではないので、料金は先に交渉して決めるのだそうだ。55ドル。しかしこの運ちゃんはシェラトン・ニューヨークの場所を知らなかった。わたしもほとんどガイドブックを読んでいないのでよくわからない。車の中で読んで7番街52丁目にあることを確認して教える。
6時過ぎホテルにチェックイン。やたら日本人が多いのに驚いた。LOOK JTBのカウンターまである。
7時、あちこち電話してからホテルを出る。名高いミュージカルでも見てやろうというのである。雨はやんだ。しかし地図をよく見ていないので、ブロードウェーがどこなのかよくわからない。
とにかく42丁目くらいまで下ればあるだろうと見定めて、5番街をどんどん歩いていく。やっとブロードウェーを見つけて、またどんどん戻ってきた。パレス劇場の入り口に立っている制服の兄ちゃんを捕まえて座席の状況を聞こうとしたら、「俺は英語は分からない」と言われたのには恐れ入った。俺だって分かんねえよ。
7時45分、CATSがかかっているウィンター・ガーデン劇場の窓口にかけ込む。ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」の中で、ケーリー・グラントが誘拐される前に予約を入れていた劇場だ。当時は何を上演していたんだろう。あれっ、なんとホテルから2ブロックしか離れてないじゃないか。シェラトン・ニューヨークはブロードウエーの真ん中に立っていたのだった。
「キップくれ」。70ドルで入手したチケットは、舞台の真っ正面。前から5列目というプラチナチケットである。なぜこうしたチケットの入手が可能なのか。それは身障者のために、よい座席を最後まで残してあるからなのだ。デブはハンディ・キャッパーなのだ。
しめしめと思いチケットを握りしめつつ、となりのブロックのピザ屋でコーラを注文する。店員がひつこく「チーズピザはいらんかね」と言ってくる。なかなか商売熱心だ。
劇場に戻り、開演を待つ。立ち見席まで超満員だ。日本人ももちろん多い。10人に一人は日本人だろう。
いよいよ客席が暗くなり、猫が客席から舞台に上がってきた。CATSは日本でもよく知られているし、ロイド・ウェーバーの天才はいまさら云々する必要もないし、これはロンドン・ミュージカルなのだからNYとは関係がないのだが、しかし舞台装置の見事さや演出のすばらしさにはやはり感動させられた。特に照明のテクニックが凄い。
猫が次々と順繰りに歌っていくという筋立ては、別によくできましたと褒めるほどのものではない。だからそれをいかに面白く見せるかに勝負はかかっていたのだ。CATSの道具建ては、見事にそれに成功しているが、役者の方はもう飽きてきているように見受けられた。
帰り道のDELI(デリカテッセンの略(?)で、ビールとつまみを買って帰り、また電話をする。午前2時就寝。