MOMA
ニューヨーク近代美術館。建物からはみ出した、チケットを買うための列に並ぶ。しかし、やはり程なくしてチケット売り場にたどり着いた。
まず、ガーデン・カフェに行って飯を食べる。庭にロダンが並んでいる。フランス文学の大成者、バルザックの像が傾いて立っている。見事な立像だが、これはスミソニアンにも、彫刻の森にもある。2階、ゴッホの「星月夜」も有名な作品だが、一番素晴らしいと思ったのは、ルソーの「眠れるジプシー女」だ。「幻想的」という表現がぴったりである。ピカソも、「アビニョンの娘たち」に至るキュビズムの流れをたどることができるほど充実している。ドイツ表現主義は、やはりウィーンにはかなわない。3階、ポップアートは面白い。モンドリアンやポロックを延々と見る。4階、バウハウスの作品群が並んでいる。あまり工夫された展示と思えない。むしろココに展示されることで芸術としてのお墨付きを与えるという機能しかないのではないか。よくわからんが。
いずれにせよ、実に見応えのある施設だ。ミュージアム・ショップで絵はがきを買って、2ブロック離れたホテルに向かうが、途中遠回りしてカーネギーホールに立ち寄る。滞在中は何もやっていないことを確認。
5時。ホテルに帰ってシャワーを浴び、着替えてネクタイを締める。このとき、日本からオペラグラスだと信じて持ってきたものが、カバーを開けてみるとカメラのフラッシュであったことが判明する。南無三。5時30分、会計事務所アーンスト&ヤング税務部に勤めるKさんに電話する。夕食をご一緒させていただくという計画である。彼女のオフィスは、なんとホテルのとなりに建っている。
しかし、普通8時から始まるオペラが、この日は7時から始まることを発見。食事時間を短縮せざるを得ない。5:45分。ロビーで待ち合わせて、挨拶もそこそこに徒歩で、Kさんが予約してくれていたセントラル・パークに面したイタメシ屋、SANDOMENICOに向かう。コースが端折って出てくるシアター・メニューを頼む。
都銀に勤めていたという金子さんは、実に聡明な女性である。完全な頭脳流出である。日本経済についての危機認識も私と一致している。職場での彼女の周囲はロシア人や韓国人ばかりで、こちらの企業が労働力という点でいかに国際的であるかがわかる。会計事務所なのである程度働くと、客に引き抜かれて職場を去っていってしまうのだそうだ。
もう少し話したかったが、時間がない。翌31日、ニュージャージーの自宅で開く年越しパーティーのお誘いをいただくが、1日にワシントンに向かうことを考えると少し難しいとお答えする。残念至極。