はじめてのアメリカ旅行記 レミゼ.1
5時。チケットサービスに「レミゼ」の切符を受け取りにいく。伝票を出すと係員は「よかった」と言う。すでにチケットは、まだ取りに来ていない他の数枚と一緒に、机の上に並べられていた。「7時までに劇場に行け」と言われる。合点承知。理由は知っている。
部屋に戻ると、なるほど「早く切符を取りに来い」というチケットサービスからの伝言がボイスメールに残されていた。シャワーを浴び、着替えて6時ごろ、インペリアル劇場に徒歩で向かう。
すでに大量の警官が配置につき、交通遮断の準備をしている。ブロードウエーの歩道は混雑が増してきた。「HAPPY NEW YEAR」と書かれたプラスチック製の小さな帽子をかぶっている人も少なくない。子供は「新年を迎える笛」というやかましいものを持っている。ここ、タイムズスクエアで行われる、新年を迎えるカウントダウンに参加しようという人々である。毎年十数万人が集まり、タイムズスクエアに接近することすらできないという大混乱となるのである。
そこで私の作戦は、オペラやNYフィルのガラを捨てる替わりに、このカウントダウンを取ろうというのである。インペリアル劇場は45丁目。すなわち芝居がはねて劇場を出れば、そこはタイムズ・スクエアという算段なのだ(追記 この翌年の大晦日もニューヨークに行って、懲りずに同じことをした。演目は「タイタニック」だったが)。
その前に腹ごしらえをしなければならない。劇場の向かいのイタメシ屋に入り、スープとパスタを注文してワインを飲む。7時30分、そろそろいいかなと頃合を見て店を出る。けっこうな寒さだ。今回の旅行は異常なほどの暖かさに恵まれたが、よりによってこの晩だけが、厳しい気候になってしまった。酒屋には大変な行列ができている。シャンペンを求める人々だ。8番街を通って劇場に向かおうとするが、歩道は東京並の人混みになっている。警官が青色の木製の柵を使って、東西の交通を遮断し、タイムズ・スクエアへの人の流入を完全にシャット・アウトしている。切符を見せて、ようやく通してもらう。