タイムズ・スクエアの年越し.2
0時00分。ひときわ大きくカウント・ダウンがあって、ハッピー・ニューイヤーの大歓声が上がる。上空には紙吹雪が延々と舞い続ける。同時に警察の阻止線が開かれ、タイムズ・スクエアから出てくる人々を逃がそうとする。みんな三々五々引き上げようとする。0時10分、私も寒さに耐えかねて、8番街を通ってホテルに急ぐ。体の芯から本気で冷え込んだ。
多くの人々が、酒瓶を片手に、仲間同士談笑し、つるみ合いながら歩道を早足で歩いている。「ハッピー・ファッキン・ニューイヤー」と繰り返し叫んでいる馬鹿者がいる。意味もなく熱烈にキスしているカップルがそこかしこにいる。レストランやDELIやピザ屋は、店内で新年を迎えた人や、少しでも暖をとろうとする大勢の客でごった返し、窓が曇っている。店の天井には色とりどりの風船の束が張り付き、床には紙テープが散乱している。これらのバカ騒ぎは、朝まで続くのだそうだ。
ブロードウエーを横切ろうとすると、大群衆が置き去りにしたものすごい量のごみに驚かされた。帽子や笛はいいのだが、シャンペンやビールの瓶が、踏み場もないほど転がっており、これが遥か先までブロードウエーを埋め尽くしているのである。道路がごみ捨て場になったようなものである。これを明日の朝までに、通行できるように完全に片づけるのだそうだ。いったいどうするのだろうか。おっ、向こうからでっかい清掃車がやってきたぞ。しかし、そんな見物にもつき合っていられない。
ホテルは、7番街側の出口は封鎖されている。52丁目側に回ると、ホテルの入り口で頑強そうなお兄さんたちが7、8人集まって客の鍵のチェックをしている。さらにエレベーターホールの前でも二重にチェックされる。いつもは10時以降、エレベーターの前でチェックしているだけなので、当夜はさらに警戒厳重である。
ニュー・イヤー・イブは無礼講なので、ホテルに上がり込む不届き者が多いという計算が成り立つのだろう。寒さも厳しいことだし。実際、宿泊客でない人間が入り込もうとして、追い返されているのを目撃した。しかしそんな様子を見物する余裕もない。とにかく寒い。部屋に戻り、バスタブに湯を入れて身を浸す。「テレビの操作でチェックアウトしろ」というふざけたホテル側からの伝言がボイスメールに入っていた。1時30分就寝。