ホワイトハウス
1月2日(木)
7時起床。7時30分、ホテルから近いホワイトハウス・ビジター・センターの行列に参加。8時、「10時10分ごろ」というホワイトハウス見学のチケットをもらう。ホテルに戻ってガイドブックを眺める。電話をかける。9時30分、チェックアウト。このホテルは落ちついた雰囲気のいいホテルだと思う。安いし。ぶらぶらと財務省の前を歩いてホワイトハウスに向かう。
10時、ホワイトハウスに入る。警備の兄ちゃんたちがものものしい。見学できるのはこの建物の東翼と本館の1階2階だ。本館の3階に大統領一家が住み、西翼に大統領執務室がある。建物内部はヨーロッパの宮殿のような内装で、「黄色の部屋」「緑の部屋」……とわかりやすい。まあ、たいしたものではない。
このように公開されているのは、この建物が国民の税金によってつくられた国民の財産だという証左である。全米のとんでもない田舎から、一度くらい首都を見てやろうという国民がワシントンにやってくる。そのとき柵越しでしか大統領の公邸が見られないというのであれば、納税者としては面白くない。だからホワイトハウスも、議会も、FBI本部もペンタゴンも公開されているのだ。外国人にまで。まるで観光資源である。日本で、首相官邸に一般人が出入りすることなど考えられないことである。その国の元首にどれだけ国民が接近できるかは、民主主義度のバロメーターになるかもしれない。
去年ストックホルムに行った。国王の夏の離宮で、ドロットニングホルム宮殿という、世界遺産に登録されている美しい城がストックホルム郊外にある。そこでは、夏の間は国王一家が1階に暮らしているのだが、2階3階を公開していた。すごいものだと驚いた記憶がある。
ホワイトハウスの庭を通り抜けると、大統領就任パレードの見物のための桟敷が道の両側に組み上げられ、工事の鎚音が響いている。この通りは、ダラスの連邦ビル爆破事件の後、車の通行が禁止されたそうだ。USTRのけちな建物を横目で見て、モールの方に歩いていく。途中でホットドッグスタンドでホットドッグとコーヒーを買い、ベンチに腰掛けて食べる。3ドル。体を温めて、モールをどんどん歩き、11時、リンカーン記念館にたどり着く。
リンカーン像には、絶えず観光客が詣でている。記念堂の入り口から見上げた高さ5.7メートルのリンカーンは、台座に乗ってさらにそびえており、市民の代表者として生き、自由と民主主義という理念を貫き通す彼の強い意志の力が、威厳を帯びつつ見事に表現されている。両側の側面には、彼の理念を語ったゲディスバークの演説が刻まれている。建物の周囲には、アメリカの各州の名が刻まれている。
すべての人間は平等であり、自由であるという理念を貫くために、内戦をも辞さなかった大統領は、アメリカの精神の結晶である。理念のために内戦までやるのなら、外国に攻めて行くぐらいは当然であろう。
モールの側に降りてきて、ベトナム退役軍人記念碑を見物する。なだらかな坂を下って上る間に、黒い石に刻み込まれた5万8000人の、ベトナムでの死者、行方不明者の名に詣でることになる。名前は、年とアルファベット順に並んでおり、電話帳のような名簿で検索することができる。また、頼めばボランティアの人が探してくれるのだそうだ。石版の足下には、いくつもの献花が置かれていた。
モールの中心にあるREFLECTING POOLの脇をそぞろ歩いて議会の方に戻る。水鳥の群が水から上がって、林の方に移動していく。その群を迂回しながら、何人もの人がジョギングに精を出している。案内板には、「このプールは、インドのタージ・マハールの前の噴水をまねしてつくった。長さ、工期、かかった費用はいくら」と書いてある。
さらに歩いて、ワシントン記念塔の麓に達する。無料でてっぺんまで上がれるようだが、並ぶのが面倒なのでよしにして、塔の周りにある塔の建築の由来についての説明板を順番に見て歩く。ベンチには、いろんな人種の観光客が腰掛けていた。