Moskowitz氏
適当に時間を潰して、スミソニアンの駅に降りていく。駅の出口で、ホワイトハウスへの入場整理券を売っている黒人がいた。9時頃までにビジターセンターに行かなければ、入手できないのだ。自動販売機での切符の買い方がよく分からないので、1日券を買う。
地下鉄の駅のデザインは統一されていて、面白いデザインだが実用性という観点からは落第だ。間接照明は格好はいいが、暗くて新聞も読めない。VIENNA行きの電車に乗ったつもりが、電車はPENTAGON CITYへ。ROSSLYNという駅まで戻って乗りえ、VIRGINIA SQ-GMUという駅に着く。
1時、地上に上がってみると、GMUという大学のぴかぴかの校舎だけがあって、空き地が広がっている。駅前の公衆電話から、Ken Moskowitz氏の自宅に電話する。彼とは、彼が東京のアメリカ大使館の広報部長だった頃、よく遊んでいた。現在はロシア語の語学研修中で、この夏にはウクライナのキエフに赴任する予定。電話すると、自宅までの道のりを教えてくれた。英語なのでよく分からない。指図されたと思われる方向に歩いていくと、彼の住所の家を発見。しかしノックしても誰も出てこない。入れ違いか? 道路に戻って待っていると、駅の方向に彼らしい人影が。お互い手を振りながら近づく。ケンさんお久しぶり。
自宅に招じ入れられる。昨年、17万ドルで購入したのだそうだ。駅から近く、家の前は公園という最高の立地。建物は築70年の2階建て長屋づくり。正面に小さな庭がある。居間で彼が日本を去って以来の写真を見る。彼の写真の腕は素晴らしい。世界中を旅している。西海岸に行って、やはり日本に赴任中に仲の良かったKRISTINA SCOTTと山に登った写真を見る。何を食べたいと聞かれて、日本にないものがいいと答える。
そこで、歩いて隣の駅であるBALLSTONの駅前に向かう。500メートルと離れていない。ここは大規模開発が行われており、ホテルや百貨店や大きなマンションが駅の周囲に林立している。ケンさんは「しばらくするとウチの周りだけが古い木造建築になる」と言う。うまいというメキシコ料理店に入る。入り口に「携帯電話はこの中へ」というごみ箱がある。おもしろいジョークだ。そういえばアメリカではあまり携帯電話を見かけない。結構なことだ。高校生が携帯で電話している日本は、やはり異常だ。
ケンさんとの会話。
「今回の旅行は、仕事ですか? 遊びですか」
私「遊びですよ」
「アメリカでは、どこを回るんですか」
私「NYとワシントンです」
「それはアメリカじゃあない。もっと田舎に行くべきです」
私「でもまあ、アメリカの経済と政治が知りたいと思ったもので」
「それは遊びの旅行じゃない」
そうかもしれない。でも、好奇心を満たす旅も十分遊びなのだ。ケンさんは、しきりと週末に田舎に行けと勧めてくれた。ここのメキシコ料理は、なるほど今まで食べた中で一番うまかったが、量が多いので食べきれない。でっかい黒人のウエイターが、「持って帰るか」と聞いてきたが、何を言っているのかさっぱり理解することができなかった。