航空宇宙博物館
3時、ケンさんと別れを惜しんで地下鉄に乗り、またスミソニアンの駅に戻ってくる。国立航空宇宙博物館にまっすぐ向かう。ケンさんによると、スミソニアンは20の博物館に分かれているのだそうだ。とても全部見ることはできない。すべて入場無料。
航空宇宙博物館の入り口を入ると、リンドバーグのスピリット・オブ・セントルイスが吊してある。パーシングミサイルやSS20、V1型ロケットも並んでいる。アポロの月着陸船や火星探検のバイキング探査機、スカイラブの実験船なども展示してある。ケネディの「60年代中に月へいくもんね」演説もビデオで流れている。
こうした宇宙への挑戦の道のりを示す品々を見ながら、私が考えていたのは、「なるほど、この程度のものなら、日本人にだってつくれる。しかし、日本が宇宙開発できない理由も判明した。日本人は月や火星に行こうなどとは、決して思いつかないからだ」。
戦闘機の展示では、零戦やメッサーシュミットが並んでいる。真珠湾攻撃の解説や、太平洋戦争の作戦経過の展示も詳細だ。ウィリアム・ワイラーが監督した、ヨーロッパ戦線の航空戦のフィルムのモニターの前には、人だかりがしていた。地べたにしゃがみ込んで見入っている若造どももいた。
2階の展示を回っているだけで2時間が経過してしまい、気がついたときには、エノラ・ゲイの展示は5時までということで、見ることができなかった。残念。もうしかし、このころになると、この国の博物館の展示の規模や展示方法の充実ぶりに馴れてしまって、いちいち驚かなくなってしまった。
5時30分、航空宇宙博物館の前で手塚さんと待ち合わせ、車で20分ほどのTYSONS CORNERへ。途中レコード屋へ立ち寄る。ここの品揃えの充実には目を見張る。しばらくCDを見てから、高級ブティックが軒を並べるビルの地下1階にあるMORTON`Sへ。ここの本店はシカゴにあり、禁酒法時代から葉巻をスパスパやりながらステーキを食べていたという有名な店なのだそうだ。バーで、日本大使館の××一等書記官がすでに一杯やりながら待ってくれていた。久闊を除しつつ、早速席に着く。ウエイトレスがやってきて、肉を見せつつ早口でメニューを読み上げる。サービスのつもりなのだろうが、私にはさっぱり聞きとれんぞ。
まだメキシコ料理が腹に残っているが、私は500グラムはあろうかというでっかいサーロインステーキを頼んだ。となりの席には、いかにも成金そうなオヤジが、またいかにもあばずれそうな、露出度の高い東洋人の姐ちゃんに巨大なザリガニを食べさせていた。料金202ドルにチップを30ドルのせる。
河岸を、近所のリッツ・カールトンホテルのバーに変える。手塚氏の車で移動。
私がいかに日本経済が手詰まりであり、国家財政が危殆に瀕しているか熱弁を振るうと手塚氏も同調。それに対して××書記官は一言「戦争だな……」と言って、われわれをのけぞらせた。「日本に近くて、被害がわが国に及ばない戦争で、朝鮮戦争のような特需があればいいんですよ」。話は延々と続き0時15分、そろそろお開きということに。
同じMCLEANに住む××書記官を送り届けてから手塚家へ。シャワーを浴びてからベッドに潜り込む。1時過ぎ就寝。