PPM:「金の成る木」で「ダメ犬」を養うな
運営者 で、仕事を明快に切り刻んだとして、この出版社の社長が考えていたような、だいたいこういうふうな線っていうのが、そう外れていないと、いうふうなことが分ってきたら、どうすればいいんでしょうか。
田中 その次にすることは、数字を切り刻んで、いろいろ違うねっていうのがわかったときに、違うものを、それぞれどういうふうに処理したらいいのかっていう、発想のところですね。
例えばご存知の、ボストン・コンサルティングのプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントね。縦軸に市場成長率、横軸に利益率(シェア)を取ると、各象限が、
高 低
高 花形商品 問題児
低 金の成る木 ダメ犬
となるわけです。
このポートフォリオの中に、こういう切り刻んだビジネス・ユニットを全部位置付けることが出来ますよね。ほとんど「ダメ犬」なのかもしれないけど。
運営者 この会社のドル箱の週刊誌は「金の成る木」なんですよ。もうあまり伸びないから。あとは「ダメ犬」かな。
田中 普通のビジネスで言うと、伸びない「金の成る木」に掛かるコストだとか投入する資源はわりと節約しながら、その今までのポジションを活用して、大幅になるべく沢山そこから利益を引き出す。引き出されたキャッシュは、「問題児」に回す、というサイクルを作るんですよね。
で、「ダメ犬」は潰していくというお金のサイクル、キャッシュのサイクルというのがあるみたいですね。
これを考える。そういう意味でいうと、グルメサイトを株式公開するというのはいいかどうかわかんない。むしろ、そうじゃないのかも知れない。
要するに、グルメサイトのところに、キャピタルゲインが一時的には生じるかも知れないけども、そういうのを本当に「問題児」に回してしまっていいかどうかって議論はよくあるんです。ソフトバンクなんかは、こういうことはやってないんですね。
むしろ、「金の成る木」で得た利益を、次はまた新しいビジネスのネタを探して、そこに資本を入れて、爆発的に伸びていくと。それはそれで成り立つちますね、考え方としては。グルメサイトの公開から出てきたお金をリスクマネーとして使う、というのは出来るんですね。
運営者 今、現在は、この「金の成る木」から出ている利益を、「ダメ犬」を養うために使っているわけですか。
田中 そうそう。それを発見しなきゃいけないんです。今、お金のフローが「金の成る木」→「ダメ犬」になっていたとしたら、これは絶対まずい。
運営者 でも、たいがいの出版社はもう、完全にそこにハマッているんです。
田中 そうです。まず、それを発見しなきゃいけないし、それどころか外部からオーナーが自分のお金を持ってくる。政府の補助金があるから、それはもう社会保障なんですね。それも発見していかないと。
運営者 ビジネスじゃないことを、みんな平気でやるんですよ。