手術のしがいがある会社は多い
運営者 しかし株主は、「まったくもって本末転倒のバカバカしい話である」と思ってもおかしくないですよね。だって、「自分がオーナーなのに、何でそんな社員の意見を聞かなきゃいけないんだ」と。
田中 それはそうですよ。だけど、結局そういうふうに、資本家の立場でストレートにバサッとやれないわけでしょう。
運営者 変だな。もしそこがもう少しはっきりしてたらば、ものすごく再編成はやり易くて、そっちの方が僕は社会的に裨益するんじゃないかと思うんですよね。
田中 でも、現実に資本家として歴史的にやってこなかったわけだから、今さら急に、「俺は資本家だ」と言い出しても無理なとこが。
運営者 結局、株主としての責任を果たしてこなかったということになるわけですね。
田中 そうです。オーナーは、本当は自分の儲けも注ぎ込んでやってきたかもしれないけれども、基本的なとこで、本来の資本家としての自分の立場とか、そういうのを明確にしてこなかったということも言えるわけだから。
運営者 それについては、すごく曖昧にやってきてるんですよ。だからこの会社みたいに、儲かるところもあるけど、儲からないところがあって、全体としては利益が出てないというのは、実は手術のしがいがあるっていうことになるから、実は出版社なんて僕はバイアウトの会社なんかの、結構いい餌食だと思うんですよね。
田中 ただ、出版というのは、水物だから。
運営者 と思われるでしょう。ところが、やっぱり出版の仕事はその「金の成る木」の部分が結構安定性があるんです。ていうのは、ブランド商売だから。ですから、確立されたブランドが出来れば、そのブランドの売上げをずっと続けている限りは、結構安定した収益があるということが基本にあるわけです。
そうすると、それ以外のところは切り離して、価値のあるブランドのところだけを幾つも組み合わせる会社を作れば、これは高収益企業だし。
田中 本当はそれが基本動作なんだけど。
運営者 だから、こういうふうにしてリバンドリングするところはいいけれど、モタモタしてるオーナー企業というのは、例えば言っちゃ悪いけど○○社(お好みの出版社名を入れてください)みたいなところは、実は一番危ない会社になると思うんですよ。メディア再編成に一番遅れることは間違いないんで。