部隊指揮官のスキルが上がれば業績も上がる
織田 聡氏
織田 そういったリーダーシップの根源であるものの見方とかスキルを身につけなくても偉くなることができたという、きわめて甘い世界であったと思いますね。
運営者 それで今までやってこれたというのは、まったく不思議なことですね。
織田 それは一部の現業の優秀さによって、継続的に仕事が成り立っていたわけであって、けっして組織のリーダーが自ら作り出した機会を活かしてきた結果ではないんです。
運営者 しかしそれは、現業でない人たち、つまり資源を集中的に管理して最も有効に使うにはどのように配分すればよいのかを考えなければならない本社、そこが一番現場から遠いわけですが、そこにいる人たちは、本社に居続けることを目標としているわけで、実際問題の資源配分のための情報収集や分析のスキルをまったく磨いてこなかったということでしょう。
織田 やっぱり個々人の問題意識による学習というのは、限界があると思うんです。ある程度会社として、そういった問題意識の醸成とか、機会の提供くらいは、やったほうがいいんじゃないでしょうかね。
運営者 徐々には進んでいるみたいですね。社内でコーポレート・ユニバーシティを開いたりしてるみたいですから。
この前、ある大きな商社の人事部の人にお話を伺ったら、ハーバード・ビジネススクールと組んで、プログラムを作ってるんです。莫大なコストをかけてやってますね。
織田 部隊指揮官のスキルが上がれば、業績は上がっていくということはあると思うんですね。
運営者 今までは、それは必要のないことだと考えられていましたね。どちらかというと、総大将に乃木将軍がいて、二百三高地で敵のマシンガンの前に肉弾突撃を繰り返している。「それでもいいんだ、美しい話だ、文句を言うな」というのが、日本組織の美学なんです。
そしてまた、それを補ってあまりある成長を過去の日本企業は成し遂げていたから、リーダーにはそのようなスキルが必要なのだという発想はなかったんですよ。
織田 年に2回の高校野球は、日本の体育会系文化の補強材になっているんですが、たいへん問題なのはリーダーシップの本質を誤らせていることにあると思うんです。
リーダーシップというのは、ビジョンを提示して、それを分かりやすく説明して、納得させて、構成員を鼓舞することでしょう。
運営者 すごい簡単なことですよね。
織田 だけど高校野球というのは、ブレインワークなしで、「とにかく頑張ろうぜ」という風に叱咤激励するのがリーダーシップだという印象を世間に植えつけていますよね。