組織のOS作りがリーダーの大切な仕事
織田 聡氏
織田 だけど高校野球というのは、ブレインワークなしで、「とにかく頑張ろうぜ」という風に叱咤激励するのがリーダーシップだという印象を世間に植えつけていますよね。
やはり私が今まで見てきた経験でも、ただ「頑張ろうぜ」と言うことだけしか知らない管理職が多かったですよ。だけど当の管理職にしてみれば、それがリーダーシップだと思い込んでいるわけです。
僕はリーダーの大切な仕事は、仕組みやフレームを作ることだと思っています。OSをリーダーが作って、そのOSに部下がのっかることができるようにするわけです。部下が繰り返し反復できるようにし、その反復が良い成果を生み出せるようにすればいいわけです。そういう段取りとか仕組みを作るのがマネージャーの役割です。
それをせずに、昔の枠組みのままで、ただ「頑張れ」と言っている役員や管理職が多いですね。
運営者 わかりますよ。
雑誌を作るときに思うんですけど、「雑誌」というモノをつくることだけを考えていたのではダメなんですよ。ぜんぜんダメ。そうじゃなくて、コア・アイデンティティをどう設定するかとか、必要資源をどう蓄積するかとか、ロジはどのような効率的な体制で動かすかとか、ブランド・コントロールをどうするかなど、雑誌の周辺のことを考えないと、タダの記事の寄せ集めだと雑誌にならないし非効率なんですね。
このへんを考えている人は、ほとんどいないですよ。モノとしての「雑誌」を作るだけで必死になっちゃってる。それだと負けますね。
織田 それで、変わらなきゃいけないことがわかっているのに、変わる術を知らずに途方にくれている人がいる一方で、それはまだいいほうで、問題の所在すら認識していない人もいるんです。
運営者 自分の立場を守りたいがために、問題の存在すら否定していますよね。「問題があってはならない」と思っているんです。問題はないことになっているのです、彼らの頭の中では。
織田 結局、自らの生存を脅かされない限りは、衰退があるだけで、「自分のやってることに問題がある」とは考えないでしょう。ただ周りが悪いだけですよ。
運営者 もうひとつは、日本型組織は責任の所在が消滅する仕組みになっていますから、責任を感じないのであれば変わろうと動く必要も全くないんですよ。
織田 昔の仕事の延長でおまんまが食べられてさえいれば、責任追及されないですからね。年に1%や2%の売り上げの減少だったら、責任はとらずにすみますから。
年間20%の売り上げ減少が3年も続くというのであれば、問題の所在が認識されるでしょうけれど。
運営者 大企業であれば、そんなことはないでしょう。
織田 鉄鋼業界などでは考えられませんね。造船だったらありえますけど。そういった鉄鋼みたいな農耕型の企業だと、売り上げが減るにしてもわりと緩慢なんです。緩慢だと問題が露見しづらいですよね。