変化のスピードがめちゃくちゃ遅いのはなぜ
織田 聡氏
織田 農耕型の会社だと、お客さんがいっぱいいるので、どこかの会社がだめになっても、他のお客さんでカバーできる。1つの会社が大きな売上にウエートを占めていなければ、1年間でガタっと売り上げが落ちるということはないんです。そうすると問題の所在が明らかにならないわけです。
運営者 現在安定的に走っている多くの会社が、そのようなポジションにいるわけです。
まあ、社員の意識はなかなか変わっていないということですが、しかしシステムとしてはキャッシュフロー計算書が入ってきたり、会計のシステムもどんどん変わったし、企業市民憲章とか、コンプライアンスやら社会的責任やらの新概念が導入されたりとか、ずいぶん変わったと思いますよ。
織田 10年前と比べると、「系列の美徳」を言いつのる人間もずいぶん減りましたしね。談合だって「醇風美俗だ」と言ってた人がいましたからね。
運営者 (笑) そういう人たちって、社会性が全然ないんですよ。てめえさえ良ければいいということなんですから。
織田 だから、徐々に変わってはいるのですが、スピードはめちゃくちゃ遅いですよ。
アジアに行くとね、トップリーダーの「変わらなければならない」と思っている強さは、東南アジアのリーダーのほうが強いと思うんです。中国もそうです。
日本のトップリーダーは、ファッションとしての変革意識しか持っていないかもしれないですよ。
運営者 それでもまだ言ってるだけましなんですよ。
小泉さんもそう。彼以外の政治家は、「変わるのはよくない」と言ってるんですから。それよりはましだという、ものすごいシャビーな選択しか国民は与えられていないですよね。
織田 だから、企業も少しずつ変わっているわけですが、問題なのは、ぜんぜん変わっていない企業も生き続けることができるということでしょう。
生かされてしまっているわけです。それはなぜかというと、取り引きが硬直的だからだと思うんです。企業間取引におけるブランド力が、日本は強いんですよ。
運営者 強いと思いますね。よくわかります。
織田 大企業というのは、1つのブランドですから、同じ品質や値段でも、過去からのブランド蓄積があるということで、生かされてしまうんです。
運営者 それが如実に出ているのは、メグミルクの失敗ですよね。いかに「雪印」というブランドが強かったか。あれ、まだ雪印にしてたほうがよかったんですよ。ものすごい宣伝投入をやったんだけれど、ブランド力の回復というか、新しいブランドを根付かせることははできなかったですね。
織田 ロッキード事件のときの丸紅は、もう痛手から立ち直れないかと思ったけれど、その後少ししたら回復してましたもんね。