外界との競争によって、進歩が生まれる
織田 聡氏
運営者 給料は寝ていても入ってきて、フリンジベネフィットはいっぱいあって、自ら防護壁に守られているという意識があって、そこでぬくぬくととしていたら・・・。
織田 そういう社員を抱えている企業が生き残ることができているという日本のビジネス社会のあり方が問題かなあという気がしますね。
結局さっき言ったブランドの問題に行きつくんですけれど、 「あの会社とは以前から取引があるから」とか、「何か昔からあって大きそうだから安心だ」という理由だけで仕事を与え続けてしまおう、お客の方が問題なんじゃないかなあ。モノを買うということは仕事を与えることですからね。
運営者 わかりますよ。
織田 オン・ザ・スポットでの判断力を、個々のカスタマーが持ってないということが問題なんです。
運営者 タコツボ人は、オン・ザ・スポットというのは、あくまでも避けたいわけですからね。
織田 日本人は安定が好きですからね、仕方がないのかな。
運営者 そのためにコストが高くなっていることが問題だと考えないのであればね。
織田 それはやっぱり、世界規模での競争に日本人および日本企業を晒すしかないでしょう。
運営者 すでに晒されているのではないのですか。
織田 全然ですよ。FTAの交渉だってとん挫したままだし、FTAのウェブの中に日本は入っていませんよ。
アジアの中で、ASEANと中国、ASEANとインドのFTAは進みつつありますからね。日本は多国間のルールであるWTOが大切だと言っていますが、そう言ってる間に他の形で疑似ラウンドが進んでしまうかもしれません。
運営者 まあ、中国が言っているFTAというのは決してわれわれが考えているものと同じとは思えませんけどね。もっと違う恐ろしい形なんじゃないんですか。朝貢貿易に近いような。「自分たちだけがフリー」な自由貿易ということで(笑)。
織田 ですから農業問題に隠れて、日本の産業界も結局自由貿易に晒されずに済んでいるというところがあるんです。
運営者 日本企業は、そういう農耕型の文化を背負い続けているというのも、いかんともしがたい事実なんですよ。
織田 外界との競争に自らを晒すことによって、進歩が生まれるのではないでしょうか。