他人との関係の中でしか生きられない
織田 聡氏
運営者 賢い消費者になりなさいと。
織田 「他人がいいと言ってるから」という理由で選び続けるのはやめなさいということですよね。言ってしまえば身も蓋もない話ですが。
運営者 自分が生きるために、そのような考え方をすることは必要なはずなんです。それをせずに他人のまねをしても生きていられる状況のほうがおかしい。
織田 それはやっぱり、みんな面倒臭いことが嫌いだから。
運営者 だけど、自分の価値観を磨くというのは、楽しいことではないんでしょうか。
織田 その美徳を持っている人は少ないですよ。
運営者 そうすると自分の価値観を磨くより、シャネルとかルイ・ヴィトンを買う方が・・・。
織田 大多数の消費者にとっては楽しいんでしょうね。「人と違っていることが喜びである」ような社会にならない限り、ブランドパワーは続きますよ。
結局ブランドというのは、その類縁概念として準拠集団があるんです。つまりブランドものを買うことによって、ヨーロッパに行ったことがなくても、その準拠集団の価値の中に身を置くことができるので安心できるわけです。
逆にいうと、みんなの「準拠集団に準拠したい」という意識がなくなれば・・・。
運営者 ブランドは解体すると。
織田 準拠集団意識を作っているのは、実はブランドカンパニーの広告宣伝戦略なんですよね。
運営者 消費者が「関わりたい」と思うような価値を広告で提示して、「これを買えばあなたもこの価値に自分を関係づけることができるんですよ」という訴求です。
織田 そうではなくて、「その品物が本質的にいいものだから、その品物が提示している準拠集団に関係なくその商品を買うのだ」というのであれば、どんどん買っていただけばと思うのですが、ブランド物を買う人も多くの動機は、「これを持っているとかっこいいから」とか、「この商品なら安心だから」とか、まんまと広告宣伝戦略に乗せられているわけです。
運営者 しかし彼らにとってみれば、そういう意味でこそブランド物は高くても買う値打ちのあるものなんです。それを買うことによって少なくとも心の防護壁を張ることができるからです。
織田 結局それは、他人との関係の中でしか生きることができないということですよ。