ミドルアップダウンマネジメントの弊害
織田 聡氏
織田 野中先生は、「日本の会社は中間管理職が一番力を持っている」と言ってますよね。
運営者 ミドルアップダウンマネジメントですから。
織田 あれがすごくまずいなと思うのは、課長レベルが部分最適の考え方で、職権を持ってしまっているわけです。そうしますと、ひとり反対をするとみんな何も言わなくなってしまうわけです。だからミドルアップダウンには、ものすごい弊害があります。
課長次長クラスは一番意識を高く持っているけれど広い視野はないんです。部長まで行くと、「一丁上がり」という意識を持ってしまうから、広い視野がないうえにディシジョン・メイキングはしないし・・・。
万人をハッピーにする意思決定というのはないんですよ。だけど課長クラスは自分の配下の部分最適を目指す意思決定を続けているわけです。それをやっていると、会社全体を見る訓練をされないまま持ち上がってしまう。そして自分が偉くなってしまうと、「自分はこれで終わりだから、あとは下が勝手にやってくれ、若い人に任せよう」と言ってしまって、自らの権限を放棄してしまっているわけです。
運営者 そうすると、進歩はまったくありませんね。
とりあえずの責任を放棄しているということも問題ですが、僕はそういった経験を、「オレの時は上司はいい加減だったけれど、オレが部長になったらそんないい加減な意思決定を行わないように、そして若いときから全体最適の視点を持たせるように、組織知を醸成するように知識創造システムを変えよう」と動くべきでしょう。
そこが分かれ目だと思うんですよね。上に上がってしまえば、「これでもう終わり」と考える人は、そもそも自分のことしか考えていなくて、全体利益に貢献しようという動機自体が欠けているんだと思うんです。
例えば、「会社のために」っていう言い方をしますが、そういう人の場合は、「自分を守りたい」と言っているのと意味が一緒なんですよ。だから、「会社のために」と勢いこんで言っているやつは、必ず自分の保身をはかっているわけです。
織田 企業不正事件を起こした会社はそうでしょうね。
運営者 だけど本来はそこで、「お客さんのために」と言って自らの責任をそこで認めるという態度があってしかるべきですよ。だけどそんなことをしたら、よその会社に移れないわけですから、それはできない。だから「オレたちは悪くない」と言い張るしかないんですね。
しかしそれは、人間の弱さの裏返しでしかないわけです。
織田 考えてみれば、顧客が強くないですよね。
運営者 顧客と株主が弱いんですよ。
織田 「配給社会」と言えるかもしれませんね。