進歩と顧客価値の乏しい階層社会
織田 聡氏
織田 「配給社会」と言えるかもしれませんね。
運営者 ものを持っている方が強いわけですか(笑)。「売ってやっているんだ」と。
織田 買う方も、「配給してもらっている」という意識があるんじゃないですか。「買わせてもらっている」と。
運営者 それは顧客接点の問題かもしれませんよ。顧客接点に近い人ほどお客さんのことを考えようとしますが、遠い人にはその意識はないですよ。だから、お客さんが求めているものを考えない。
それに加えて一番僕が気になるのは、スピードというものを意識しないということです。
「客のニーズを一刻も早く満たそう」とは考えないんですよ。「スピードが競争力の源泉である」という意識も全然ないし、さすがに農耕民族ですよね。急がなくとも、季節は必ず毎年4つ巡ってくるわけですから、のんびり構えていればいいわけですよ。
「それでそんなに給料貰ってていいのか」っていう感じですね。
織田 顧客のほうも、関係性の中にからめ取られていますからね。
顧客自身がウェブから一歩引いて、自由な立場でものを選べるんだったらいいんですけれど、結局、関係性でものを買ってしまっていますから。しがらみとか人間関係とか。
運営者 「力関係」なんですけどね。
織田 だから、顧客自身も知らず知らずのうちに談合に巻き込まれてしまっているということがあるかもしれません。
運営者 談合に荷担しちゃってるんですよ。
昔霞ヶ関に行くと、建設省の下のロビーにやたら大勢の人がいて、輪になって話してるんですよ。何やってるのかと言うと、談合やってるんですよね、役所の1階のロビーで。「こんなわかりやすい所でやるなよ」と。
織田 抜け駆けを許さない社会であったということもありますね。
運営者 きっちりとしたピラミッド秩序があって、上下の序列がしっかりついていて、外の世界との交渉を禁止されていて。
去年の暮れですが、日本最大の国粋主義団体のトップが脅迫罪で逮捕されたんですよ。ある会社を脅していたんですが、その理由というのが「談合破りをやった」ということらしいんですね。旧日本型の世界では、談合破りは裏切りであり、後ろ暗いことであり、罪ですらあるわけです。
つまり、その階層秩序こそ、守るべきものなのです。それこそが追求すべき価値であったんですね。動かすと罪になるんです。
しかしそこに欠けているものはなにか。進歩ですよ。
織田 進歩と、対外的な成果、つまり顧客価値ですね。