信用できないから資本集約ができない
織田 聡氏
運営者 サラリーマンは会社から借金をして家を建てるために、会社の奴隷にならざるを得ないのが現状です。そしてやっと払い終わったと思ったら、また次の家を建てなければならない。まったくばかばかしいことだと思うんですね。もしそんなことをせずにすめば、みんなどれだけ裕福な暮らしができることか。今の金利だったら、買うよりも借りるほうが安く済むわけですから。
ベンチャー起業も不動産も、資本集約をすれば、いいものを作って長期で回収することができるはずだと思うんです。
それができないのはなぜか。
さっきから共同体社会という言い方をしていますが、それは根本的には他人のことを信用していない社会なんですね。だからお互いの自由を縛り合っている。信用できないから大きな投資はできない。みんな相手から「奪う」ことだけを考えて生きている。それじゃダメだと思うんですね。
共同体でないオープンな社会であれば、相手が何者だかわからなくても話をだんだん詰めていって、契約でお互いを縛ることで信用を担保することができる。あるいは1人の相手に自分の資源をつぎ込むのでなく、大勢に投資をしてリスクを分散をやるでしょう。そういう投資と回収の仕組みがあれば、もっと効率的に生きられる社会をつくることができるのではないかと思うんです。
直接投資ができる文化がないということと、裕福でもないくせに家を建てては潰し建てては潰ししているというのは、日本の社会が遅れている証拠のような気がするんです。
・・・長くてスミマセン。
織田 ベンチャーが存続するためには、株主のほかに顧客が必要ですよね。推進者は最初の時だけ大切ですが、企業は継続的に発展していくためには顧客が必要である。しかし日本にはその顧客がいない。大企業が、ベンチャーからモノを買わずに、大企業からしか物を買わないというのが問題だと思います。大企業自身がブランド購買しかしていないですね。
運営者 あるいは自分の系列の信用のできるサプライヤーからしか買わないと。
織田 でもそれをやると、結局そういう身内商売に甘えてしまうから、それが自社の技術力や体力を弱める一番の原因になってしまうんですよ。
創始期のベンチャー企業は顧客へのチャネルがないから、大企業にモノを売るしかないんです。その時に、大企業が、やっぱり似たようなものを作っている大企業からしか買わない。どういう仕組みがあれば、ベンチャーからモノを買ってくれるかというと、残念ながらそういう仕組みはないんですよね。
運営者 大企業の購買担当者の意識を変えることだと思いますが。ベンチャーが安くていいものをつくって持ってきたら、「お前は本当にこれをこの値段で売ってくれるのか、じゃあ買おう」と。これ以上のものは必要ないように思うんですが。
電源メーカーのネミック・ラムダ(現デンセイ・ラムダ )が伸びた契機は、画期的な極小スイッチング電源を作ったけど、日本では誰も買ってくれない。しかたがないので、アメリカの業界誌の中ページに3分の1広告を1つだけ載せたんだそうです。そうしたら注文が殺到して、躍進のきっかけができたというんですね。創業者の斑目さんからそう聞きましたよ。