大企業化すると顧客から遠くなって・・・
織田 聡氏
織田 結局それは、日本語に守られているからという感じがします。サプライヤーが限られちゃうわけです。日本IBMみたいな土着化した外資系企業は別として、多くは日本企業の中での競争なんですね。アウトサイダー・サプライヤーが、日本では育ちにくいんです。
運営者 ソフトの開発は外国でもいいということだったら、開発はインドやバングラデシュを使って、営業だけ日本人にやってもらえば。
織田 僕は外国の資源を有意義に使う新興勢力に期待していますよ。バングラデシュ人を使って作った安くても価値のあるソフトを売る会社というのが伸びるといいですね。そういう勢力が出てくることによって、既存の事業者も目を覚ますことになると思うんです。
それと、一般論として、営業する人間をもっと増やしたほうがいいんじゃないですかね。対外接点を持って顧客獲得に血道をあげる人を増やさなければならない。
大企業化すると何か起こるかというと、後背地が大きくなるので顧客獲得に従事する人間の割合が少なくなるんです。そうすると結局、競争から隔絶された人間が権限を握ってしまうことになる。大企業化する一番のデメリットは、顧客から遠ざかってしまうことです。
そうなると、自分たちの思いつきが思い込みに入れ替って、「これは売れるはずだ」という根拠なき楽観主義のもとに突き進んでいって、岩盤に当たるんですけれど、それで跳ね返えされてもまた同じやり方でむりやり突っ込んでいってしまうんですよね。
岩盤に突き当たったときに、「何がいけないのかな」と立ち止まって考えればいいんでしょうけれど、立ち止まって考えないんです。
運営者 そうそう、ある大きな会社の人に頼まれて、「このようなことをしたらいいんじゃないですか」という新しいスキームの提案をしようと思ったんですね。メディア業界の取引の話なんですけど業界1位の会社でね。
そうすると、まず人の話を聞かないですね。それで、ある程度話をした時点で、といってもこちらはまだ本筋の話をする前だけれど、本題に入る前に、「ああ、それはね」というふうに先に進んでいってしまうわけです。なんて気が早い人たちなんだろうと思いましたね。結局提案自体を引っ込めて話しませんでした。
織田 結論が先にありきなんですかね。
運営者 それでまたこの同じ業界なんですけれど、業界2位の会社に「ある問題について教えて欲しい」と言われて話をしていたら、先方の抱えている問題点の本質がよくつかめないんです。
「だからそれはどういうコンセプトなんですか」とひつこく聞いたら、同じことばかりをくり返して話すんです。「もうそれはわかったから、もっと本質的な話をしてくれ」と言っても、同じ表面的な話を繰り返すんですね。
それで、「どうしてこの人たちは気が早かったり、表層的だったりするんだろう」と不思議に思ったんですが、それは原因は全く同じところにあるんですよ。
つまり、全然考えがないんですね(笑)。