木下 危機に立ち向かわないというのは、放射能から避難した人たちにも同じことが言えると思うんですよ。一定程度汚染されてる地域にいれば、放射性物質の吸入リスクはコントロールできるものではありません。そういうところでは、24時間酸素マスクをして生活するのでなければ、逃げる以外に方法がないんです。
だけどその後、避難者の中で、さらに遠くへ避難し続けようとするタイプの人がいます。ものすごく多いです。だけどこれは、僕はまちがっていると思います。なぜなら、どんなに遠くに避難しても放射性物質は追いかけてくるからです。
運営者 世界中追いかけてきますよ。
木下 「南半球に逃げれば大丈夫」ということはないと思います。おそらく地球から遠ざからないと放射能からは逃げられないでしょう。
そうすると、結局どこかの時点で放射性物質にどう対処するかに向き合わなきゃいけなくなるんです。われわれはそういうことを思考しなければならない時期に来てるんです。
ただ怖くて逃げたとか、その時の思いつきで逃げたということだけではダメで、危機に立ち向かわないと。
何事においてもノーリスクはありません。だけどリスクを極限まで減らす努力をすれば良い。放射性セシウムよりもストロンチウムが多いというケースはほぼないんだから、セシウムが少なかったり、新規に降下していない所. 大人だけなら土壌汚染が100ベクレル/kg以下の所で他の要素も考えて選んで住めば良い。これは、あなたの家だけの汚染でなく、周辺の環境がどの程度なのかによるということです。一箇所の数値ではありません。間違う人が多いので。勿論子供がいるのであれば、もっと少ない方が良いでしょう。
運営者 リスク管理の考え方ですね。
木下 今東京にいる人たちは、放射能にリスクがあること自体を認めていません。だから危機に立ち向かわない管理の入り口にも立っていない。
その反対に避難した人でも、ただ逃げただけでリスクときちんと向き合っていない人は少なくないんです。
運営者 自分が主体的に物事を判断し、問題に立ち向かうというのは、中世からルネサンスによって獲得された(復活した)文明人の態度なんです。
木下 それができていないということです。
最近汚染地から避難してきている人たちは、その辺をよく考えている人が増えています。
運営者 そうでしょうね、自分も被曝してるんだから。
木下 初期に大慌てで避難した、あまり被曝していない人のある部分と比べると、質が違うんです。僕は全国を講演して歩いていますが、地域や主催者によって参加者の姿勢の違いを感じることが多いです。