運営者 次に除染について伺いたく。
「放射能で大した問題は起きないだろう」ということを前提にしつつ、政府は多額の費用で除染を行っています。おそらく数十兆円という巨費が投入されるわけですが、いったい除染というのは、意味があるんでしょうか?
木下 結論から言うと、もし除染に意味があるとするならば、それは農地ではなくて都市部、それも樹木や土地が少ない、高度に都市化されたエリアであれば、徹底除染を行えば意味はあると思います。
都心部ですね。都心部では、土に吸着した以外のセシウムは、洗浄すればなくなる可能性があります。コンクリートはまだ良いのですが、アスファルトは凹凸があるのでセシウムは留まってしまいます。だからアスファルトの道路はいちど全て剥いで舗装し直せばセシウムはなくなります。
何兆円もかけてそれをやれば首都圏の放射性物質はかなり減らすことが出来るかもしれません。僕であれば、福島の除染をするよりもそちらの方がよほど意味があると思いますね。
運営者 首都圏では、松戸とか流山で除染を行っています。
木下 それもね、除染と言えるレベルのものかどうかが問題ですよ。本当に除染するのであれば、町ぐるみ作り替えるくらいのことをやらないと、ごまかしの除染には意味はありません。松戸や流山は汚染レベルも高いし、土のところが多いのでおそらく無理でしょう。土がないところでないと除染はできないんです。
運営者 福島の除染の効果についてはどう思いますか?
木下 そもそも無理ですね。
運営者 僕はこう思うんですね、
悪いけど放射性物質が環境中に100京ベクレルも放出されたフラッシュポイントについては、もう放棄するしかないんです。福島は、もう日本からなくなったんですよ。それが、原子力発電が日本人に突き付けた請求書です。
木下 だから除染に多額の費用をかけるのではなく、1世帯あたり何千万円か渡して、住宅を手当てして避難してもらったほうがいいと思いますよ。
運営者 今のままで行ったら、今後将来的に汚染地でどれだけのヘルスケアの費用がかかるかと考えたら、天文学的な数字になると思いますよ。
木下 お金についてもそうだし、放射線健康被害のリスクを高めるのと、低くするのとどちらがいいかと言ったら、それは、低くする方がいいに決まっています。
このままにしておくと、住民には継続的な負荷がかかってきます。それを考えると避難させたほうがいいに決まってます。
運営者 放射性物質は、3年も経てば流れてしまってるということはないんですか?
木下 そんな事はありません。放射性物質は表面上流れていっても、それがまた別のところに溜まっているだけですから。そのうち一定程度は川に流れて、東京湾などを汚染しています。
除染は細かい危険な作業をしなければならないし、下手をすれば家屋を潰さなければならないようなレベルの話です。
そもそも木造家屋は除染できないのではないのかと思っています。屋根をやり替えて、軒をやり替えて……なんてことをやるのなら、建て替えたほうが早いですよ。
それを考えると、他のところはあきらめて東京を徹底除染するという手はあったと僕は思います。
運営者 でもそれは、食品流通などを含めて徹底的な放射能防御を行って、東京を住める環境にする方策とセットで初めて意味がある話ですよ。その一部分としての除染ですよ。
木下 そうです。でも全く何もしなかったので、もう無理ですよ。東京は放置されているので、健康被害は有意に起きるでしょう。
人口が減り、健康でない老人の数が増えるでしょう。安倍内閣は、移民政策でその辺を埋めようとしてるのかもしれませんね。
運営者 でもそれは、移民で埋めるのではなくて、ちゃんとした放射能防御政策を行うべきなのでは?
木下 そうした合理的な判断を、今東京にいる人たちが行える状況にあるでしょうか。避難している人たちですら合理的に行動していないのに、放射能の問題を認識しようとさえしない人たちに合理的な判断ができるとは思いません。
運営者 今の政権が考えているのは、国産原発を地震国であるトルコや、ちゃんとしたハンドリングができるのかとても怪しいアフリカに輸出しようということで、経済界もその後ろについて行って一儲けすることしか考えていません。
そういう人たちが、国内の放射能防御について真面目に考えるとは思えません。ところが半面で、放射線健康被害が起きて、寝たきりの老人が増えるという事は分かっているということですよね。そこは移民で埋めようと。
そりゃちょっとひどくないですかと。
木下 ひどいんだけれど、そういうことです。