運営者 そういう無邪気な安全厨の一方で、福島原発事故後避難した皆さんがいらっしゃいます。われわれもそうなんですけども。
木下さんは、日本でいちばんたくさん避難者の人たちを見ている人だと思うのですが、そういう避難者の現状についての評価を教えてください。
木下 一般の避難者は良いのですが、特殊な避難者の人がいて、そういう人はつまり放射能懸念で避難したのではなく、「目立ちたい」とか、「人と違うことをしたい、これまでも人と違うことをやってきた」と言った不純な動機で避難しているんです。いろんな人がいるんです。つまり、問題がある人というのは、元から問題がある人たちなんです。それが避難したから問題が露呈しただけの話なんです。
運営者 なるほどね。
木下 特に初期の頃多かったのですが、最近は減っています。表に出なくなってきてるんですね。放射能防御についての関心が薄れて、他の世界に関心が移り、今度はそっちのほうで問題を起こしているわけです。
運営者 本来は、そういう人のほうを適応障害と言うんじゃないんですかね。
木下 どちらかと言うと頭がおかしい人たちかな。
運営者 そういう特殊な人は置いておいて、一般の避難者は、3年経って生活のほうは安定してきてるんでしょうかね。
木下 厳しいと思います。いろいろ話をしてみると、生活環境が変わって、そこにうまく溶け込めている人の方が少ないように思います。
僕自身のことと比較して、その人の状況がわかりますからね。そこから考えても、うまくいっている人の方が少ないです。
運営者 避難するときに切り捨ててきたものがたくさんあって、それを回復できていないということでしょうか?
木下 それと、母子避難で二重生活をしている人の場合は、無理の上にも無理が重なるんです。シングルマザー問題で以前から指摘されてきたとおり、やっぱり日本社会は、母子で生活ができるという社会構造に基本的になっていません。
それが避難者にも押し寄せて来ている。
運営者 へえー、考えたこともなかったですね。
木下 夫がどのくらい経済的に余裕があるかによっても状況が違ってきます。
だけど実は、東京は日本でもものすごく生活費が高いところです。だから東京から、生活費が安い地方に避難したのであれば、収入がかなり減っても生活は成立するんです。
運営者 僕の実感だと、名古屋は東京の3分の2ですね。さらに地方に行けば東京の半分程度になるのではないでしょうか。
しかし、それ以外の問題も無視することができません。
だっげらいよん4コマ漫画ブログ(リンク) しばざきとしえ作木下 避難者の中に何が問題として生じているかは一概には言えません。
本当は東京でもあった問題なのかもしれませんが、東京では生活を日常的にこなすマシーンになっていて、問題を意識していなかっただけなのかもしれません。
だけど避難して、生活が変わってくるとその問題を意識せざるをなくなってきたというのが問題の底にあるケースが多いかもしれませんね。
3年経った避難者のみなさんに僕が言わなければならない事は、「放射能防御を踏まえながら、この後自分の生活をどうしていくのかについて、いい加減構築しなければならない」ということです。
運営者 できてない人がいますか?
木下 圧倒的多数の人が、まだできていないと思います。いまだに無料の住宅に住んでいる人たちがいますからね。無料の住宅は悪いことではありませんが、家賃が無料という条件のような環境はどこかで必ず途切れるはずです。終わりは必ず来るのだから、自分の力でどうやって生活するかを作っていかないと。
運営者 それは、当たり前のことだと思うのですが。
木下 でもそれができていない人は少なくありません。
母子避難のケースでは、夫と距離が近い人はまだ良いのですが、距離が遠くなってくると精神的にかなり苦しくなっているケースも多いです。