運営者 ところで避難者の数は、ここのところはどう推移しているのでしょうか?
木下 僕の感触で言うと、避難者の数は一定数ずっと継続して続いていますね。
運営者 名古屋でも、後から後から首都圏から避難者が来るんですよ。
木下 そうです。この年度末にも新しい人がかなりきています。沖縄の講演会の参加者を見てもそうでした。
運営者 そういう人たちは、なんで今避難してるんですかね?
木下 何年も避難するかどうか悩んだけれど、やっぱり体調不良が治らないから避難するという人もいるし、放射線が健康に影響するということに気がつくのが遅くて、慌てて逃げてきたという人もいるし、ようやく生活の目処が立つようになったので遅くなったけれども避難すべきだと思って逃げてきた人もいるし、人それぞれなのですが、時間が経ってからここ最近になって避難した人の方が、物事を深く考えているように思います。
運営者 なぜなんでしょうか?
木下 これだけの年月日をかけても、やはり避難しようという決断に至った人は、他の人よりも放射能について思考していた時間が長いからだと思いますよ。
そういう人は、「やはり東京に居続けることができない」という踏み込んだ判断をしたわけですから。そこがポイントです。
運営者 いろいろ考えて、練れているわけか。
木下 だから最近になって避難してきている人はまともな人が増えています。
運営者 僕らは最初から逃げているわけで、ずっと時系列で見ているわけですが、初期の頃避難してきた人たちは「とにかく取るものとりあえず大慌てで避難してきました」という感じでした。そういう人の中には、元いたところに戻っている人もます。
木下 だけど、戻っている人よりは最近避難してきている人の方が多いですよ。これはまちがいない。
運営者 他に、避難者にはどういうストレスがかかっていますか?
木下 首都圏は、首都圏で独特なものなので、避難先でも首都圏と同じような人との関係性や距離感を求めるのは無理なんです。そこは理解してもらいたいですよね。
僕は徳島の土田舎の出身ですから、そんなことは当たり前だと思っているのですが、みんなわかってないんですよ。
運営者 東京に20年以上住んでいれば、ならされてますから。だけどそれは言い訳にならないだろう、世の中には田舎ってものがあるんだから。
木下 東京は都市として確かに完成形ですよ。けど、完成形が一番リスクが高いんです。