条件2. 根回し、気配りができる人
小峰 尚
運営者 「自分のやっている仕事についてきちんと説明できる人」っていうことが、これが外資系企業で通用する条件の一個目。
小峰 「ピラミッドの中でみんなぬくぬく」っていうスタイルじゃない組織の場合に必要とされる能力の二個目は、日本企業以上の根回しだとか、気配りが出来ることかな。
運営者 それもさっき申し上げたことに繋がりますよね。
小峰 そうそう。結局、外資系企業というのは、権限が委譲されてるようで、でも利害関係者が多くて。だからレポーティング・ラインがはっきりしているわりには関係者が多いから、関係者の根回しを嫌がらずに出来る人じゃないと、なかなかうまくいかないし、逆にそういう人が評価されるようですよ。
運営者 I T革命で電子メールが、いかにアメリカ企業のそういう部分を効率化したかっていう感じがしますね。CCで送っておけば、みんな見るわけだから。これで根回しになっているわけじゃないですか。
小峰 そこで言うと、日本の企業だってある程度偉くなっている人の中には、そういう根回しが巧くて、重宝がられて、ある程度までは上がっていく人がいる。
運営者 根回しの技術だけで。
小峰 技術というかフットワークの軽さ。それはどこへ行っても通用する特性です。
それからやっぱり、外界志向の人ですかね。"世の中でよいと思われているのは何なのか"を好奇心をもって貪欲に吸収してくるようなタイプというのは上手くいく。
運営者 これすごい良くわかるけど、逆に"世の中でよいもの"を認識することは自分にとって必要ではないと思ってる人が多いんですよね,日本の企業の中では。
インターネットがこれだけ騒がれているのに、まだ「要らない」と思っている人がいますよね。それは異常ですよ。あのメンタリティーは信じられない。危険が身近に迫っていても平気な根性ですよね。
小峰 雑音だと。そんなのどうでもいいだろうということかな。やっぱり日本の企業じゃ外界志向というのは、「また雑音を持ち込んで」とうるさがられるんじゃないですか。
大企業ではやっぱり、内向きの人間が重用されることが多いかな。ちょっとそれは言えないな。社外に出るのを嫌がる人が結構、偉くなっていますよね。内弁慶が多い。外に出て行って何かモノを言うと、「なぜ、そんなことを言ったんだ」って怒られるぐらいだったら、なるべく……。
運営者 黙っていようと。
外国から要人が来て、「話をしたい」と呼ばれても、「よしっ、日ごろ思っていることを、ざっくばらんに話してやろうじゃないか」っていう人はもう、本当に役員には皆無ね。
運営者 それは、向こうも来る甲斐がないないですね。だから中国の首脳が、「日本の経営者や政治家と会っても、時間の無駄になるから会わない」と言ったじゃないですか。正しいと思うんです、あれ。遊びに来てるんじゃないんだから。国家の代表者ですからね。
小峰さんが、インタビューしてもしかたがないケースが多いっていうのは、僕はよく理解できますよ。小峰さん側としてはやっぱり、一時間いくらの収益責任があって仕事をしてるんだから。
仕事でやってる分には、成果がないっていうことは、明日のおまんまに困るということに直結してるっていう意識ですよね。
小峰 でも、そういうプロフェッショナル意識というのは、やっぱり日本の企業人の場合は逆だよね。例えば、僕なんかも、最近は月に1件やりなさいといわれてますから、仕事を取ってきて3ヶ月以内に終わらせるとすると、毎月3件くらい抱えながら走らなきゃならない。
運営者 まさに狩猟民族ですな。
小峰 そうそう。だから時給ウン万円なんだという意識を持たなくちゃいけないんですね。それはだから、問題意識の低い人と一時間会ったら、ウン万円分損をしたから、その分、どこかでまた稼がなくちゃいけないということになるわけ。
運営者 マイナスになっちゃうんだ(笑)。
小峰 結構外資系の企業で上手くやってる人っていうのは、無駄がないですよね。効率重視っていうか。僕なんかはまだまだなじめなくて、昔の日産の仲間が来るとつい時間を潰して……。
運営者 遊びに行っちゃって。
小峰 そうそう(笑)。後で時間を無駄にしたなと後悔することになる。
運営者 今日、ある経営者と昼飯食べに行ったんですけどね。やっぱりその人も経営者になってみて、いかに無駄が多いかっていうことに気がついた。本当に削ろうと思ったらいくらでも削れるらしいんですよね。
だから結局、「ぶら下がり意識」っていうのがあるんですよ。でも、僕もそこのところは会社にいた時から、「テメエで前進しなきゃいけない」と思ってましたけれどね。そういう人もいるんじゃないですかね。
小峰 そういう人を見つけないとなかなかうまくいかないのかも知れないね。