独自の基準で取材対象を選んで報道しているか.1
運営者 実際のワークフローでチェックポイントとなるのは、どのようなことが考えられますか?
三神 実際に誰もが踏襲している手続きからひとつ、挙げるとすると取材対象の選択でしょうか。
ワークフローは、先にお話しました「情報」を六つの階層で分解していく考え方―「流通物」、「出版物」、「編集物」、「文書」、「コンテンツ(言論)」、「コンテンツを構成するソース(出所)」――この全階層で信頼性を担保する、という整理の仕方をすると膨大なケース分けがあると考えています。そのスクリーニングをくぐった上で情報仕入れをする際の有用性評価のワークフローもある。だから例を挙げるとどうしても一部の断片的なお話になってしまうんですが、ご了承いただければ。
人脈づくり、リサーチ、企画立案、取材対象者の選択、取材手法の選択、取材依頼状の公式文書としての記載ルール、取材対象者種類別の交渉方法、趣旨説明と約束してはいけない事項、取材、記録、原稿種類別の作成ルール、媒体種類や分量・国別の品質担保方法や原稿化後・公開前の内容確認やクレジットの入れ方、レイアウトによる文責の重み付け開示の判断であるとか、署名記事を書く人であれば執筆原稿の署名以外で自分の名前が出る場合のリスクコントロール。コントロール不能なところで名前が使われることも多々生じてくるからですね。それと、どの段階でも、中立性保持のための様々な事前確認義務などもありますし……。
話が前後してすみません。なぜその人のコメントを世の中に頒布するのか、という取材対象者選択の問題でした。極めてベーシックなところから。
運営者 ええ。取材者、編集者にとって一番大切なポイントです。まさにそこにプロとしての仕事の誇りをかけるものですが。しかし逆に、「形だけできればいい」と思っている人は、そこを手抜きしてしまうので、結局質の低い記事しかつくれないんですよ。
三神 3つのやり方があるかと思います。
たとえば雑誌で、その年の年末にある分野の今年の人を選ぶような企画をしているケースがいくつかあるのですが、この場合はそうした情報に明るい人々に推薦を仰ぎます。一種のエージェントですね。その人がなぜいいのか、その理由や判断根拠も委ねるために、基本的には一次情報ではないのに加え、独自の切り口や視点で事象を見るというワークフローを一部、放棄していることになります。その後に直接取材をしてゼロから判断し直してきちんとカバーする媒体もある一方で、推薦時に言われた通りの切り口でインタビューしている媒体もあります。
運営者 言ってみれば、ウェブのリンク集みたいなもんですね。なにも考えずに、ただつないでいるだけと。
三神 そうですね。もうひとつは一言一句の影響力がもともと大きい特定の公人や政府などの先に常駐して、そこから発信される情報をできるだけ速く仕入れて報じるやり方。
これはメディアの中では「××番」「××担当」と言われる人材配置・情報入手の方法で、最も伝統があって凌ぎが削られている領域であると同時に、その対象のもつ影響力を根拠に相手を「いつも」取材するわけですから取材「先」の選定、という取捨選択はそもそもない領域です。
運営者 そりゃ、そうですね。そういうのはストレートニュースが多いでしょう。