独自の基準で取材対象を選んで報道しているか.2
三神 これらに対して、一言一句に影響力があると思われる先でもなければエージェントの推薦も仰がない、つまりメディア側の判断で取り上げる領域が三つめですね。例えば、キーワード検索ではとうてい探し当てることができない新しい分野のキーパーソンを捜す、発掘の役割というのは私もこれまで随分やらせていただいていますが、こうした領域です。
私の場合、というより関わらせていただいているメディアでも一部、同じ方法をとっていますが、どういうやり方をしているかというと、この中でもさらに二種類あります。
一つ目は日頃から新領域の研究会に足を運んでアンテナを張っておく。これはもちろん、ある程度の信頼性評価のスクリーニングをかけた上でやるわけですね。中立性保持上の問題点や、その集まりの名簿に名前が掲載されるリスクの判断をして参加するタイプの足の運び方です。
二つ目は社会問題に対する解決策の仮説を立てて、仮説、検証、修正の繰り返しで探索をしていくわけですね。たとえば「人口減少」という問題があれば、対策として「女性の労働力を生かす」それも「子育て後の中高年女性のキャリアを支援する」という解決策が根本的な挿し水をするポイントになってくるなという仮説が立ちますね。それを実際にやっている人がいるのではないかと考えます。
たとえばそうしたポストを可能にする中高年の女性専門のヘッドハンターがいるのではないか。専門職に紹介する紹介業があるんじゃないか、オンライン上で出産や結婚で退職した人の労働力を再利用するようなことをやっている会社があるのではないだろうかとか、そういう仮説を立てて探すわけです。この仮説自体に誤りがあれば、もちろん途中で修正します。
つまり世の中でまずこういう問題があって、その解決策を実効性のある形でやっている例かどうか、実績がどの程度あるのかという順番に考えて、その人の情報を、広く伝える必然性がどの程度あるかを精査していく。それによって取り上げるかどうかの判断をしていく。ベンチャーキャピタルの情報版とでもいいましょうか。その取材先をとりあげることは世の中に対してメディアが一種の信用付加をしてしまうわけですから、営利面を重視した投資判断とは異なる価値軸ではありますが、かなり議論を重ねるわけです。
運営者 その認識は大切ですね。
三神 つまり、エージェントに頼む前者は一種の評判モデルであり、後者は一種の絶対評価的な考え方ではありますが権威モデルではない。なぜその人を取り上げるかというと、権威がオーソライズしたからではなく、みんながいいというからでもなく、世の中の問題解決に寄与しているからだ、という発想でしょうか。
メディアによって世の中に広く頒布される前にキャッチするわけですから、参考情報が少ない。いわば社会にとっての問題解決性を根拠に、世の中に報じた場合の必然性とリスクを叩いていく判断モデルで、メディア・ガバナンスを担うミッションを公共性や中立性と捉えるのであれば、これに整合するんじゃないかと考えています。
運営者 ぼくはそれはどの方法でもいいと思うんですよ。