記者はニュースに関係してはならない.1
運営者 もうひとつは利益相反の問題が出てきます。本当はその人はその問題に関して客観的な評価はできない立場なのに、利害関係者であるにもかかわらずそういう人を出すような傾向のメディアもあります。
そもそも「記者はニュースに関係してはならない」という原則があるんです。報道するニュースに関わることからは身を遠ざけておかないといけない。署名活動で署名なんかしちゃいけないし、ましてや運動自体に参加しちゃいけないんです。
だれをコメンテーターに選ぶのかという問題はこの延長線上にあることだと思うんですね。記者との関係が切れている人でないとまずいわけです。ぼくなんか、最初に『ネットバカ』を書いたので、ネット社長と仲がいいだろうと思っている人がいますが、原則的に取材以降は会ってもいませんよ。あえて距離を置いちゃいますね。
三神 基本的には、プロフェッショナル・メディアで中立・客観的な視点を標榜して言論を売る以上、営業代行になるような行為はすべきでない、と考えるのがクリアじゃないかと。
というのも、メディアの人間は仕事上、いろいろな方にお目にかかる機会がありますから、知人などから「取り上げた人を紹介して欲しい」という依頼をされやすい。特に経済畑で仕事をしている若手には、実は先方にしてみれば単に頼みやすいというだけの理由に過ぎないんですが、アプローチが多いかと思います。私自身も「ご縁を大事に」などと有難がって判断を誤りそうになったことがたくさんありました。
ご本人の許可を得て連絡先を教えるだけなら問題はありませんが、そうではなくて、面談への同行や会食のセッティングをしてほしいという場合は問題が生じます。本来、その人物の信用のみで扉を叩くべきところを、媒体が推しているかのように見えて、その人物の営業上有利になってしまいます。これは中立性・独立性を守ることで作り出している媒体の財産、信用付加力の流用に他ならないと思いますし、間接的に媒体の信用を落とすリスクがある。
基本的には、「記事や媒体を見た」、といってご自分でアプローチしてくださいと、そうお願いすることにしています。中立性を保持する必要からできないのだとご説明しても、残念ながら一般には理解されづらいところがあって、「冷たい」などと思われてしまいますが。
運営者 あー、わかってもらえないでしょうね。「メディアは取材先と距離を置かなきゃいけない」とは考えられてないですから。むしろ「メディアは話題の人と近づけるチャンスがある」というのが一般的な認識だし、メディア人の中でもインタビューに行ってサインをもらってくるバカモノもいるし。それじゃまともな報道はできないってんですよ。
三神 最近、私の場合は実は二件、取材先との会食をセッティングしたケースがありますが、直近のものはメディア内のいわば同業者どうしで、内容はコンテンツビジネスの意見交換会ですので問題がないと判断しました。もう一件は、取引先になる可能性がまったくない経営者どうしの資金調達の判断がテーマで、営業代行にはあたらないのでこれも問題ないかなと。このあたり、判断が難しいと思うのですが、皆さんはどうしておられるのでしょうか。
運営者 紹介については、ぼくは読者サービスの一環と割り切って、「手紙を書いてください。それを先方に渡します。先方が興味があれば、直接本人から連絡があるでしょう」というふうにしてました。直接間に入るなんて考えられないですよ。
三神 ほかに極端な例ですと、商品だけ送られてきて「出入りされているメディアに配って欲しい」――コンサルタントが著書を10冊ほど送ってくる例などもありまして、このケースは送り返させていただきました。
運営者 ははは、そりゃ図々しい。